2014 Fiscal Year Annual Research Report
ケーラーリッチフローのある種の変形とその自己相似解
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13J03077
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Fano多様体 / ケーラー・リッチソリトン / balanced計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はケーラー・リッチソリトンと呼ばれる,ケーラー・アインシュタイン計量を一般化したケーラー計量に対して,2つの結果を挙げることができた. 1つは,射影空間内の任意のFano完全交叉に対する,modified二木不変量の代数的計算公式の発見である.modified二木不変量はケーラー・リッチソリトンが存在するための障害として,2002年にTian-Zhuにより導入され,2014年にBerman達によって,対数端末特異点を許容するFano代数多様体上の不変量に拡張された.ケーラー・リッチソリトンの存在問題はK-ポリ安定性と呼ばれる,幾何学的不変式論的安定性と同値であることが予想されており,K-ポリ安定性は,Fano多様体の任意の退化族に対して,modified二木不変量を用いた数値的判定条件により定義される.しかし,この概念は導入されて日が浅く,計算できる具体例はほとんど知られていなかったが,今回発見した公式により,modified二木不変量は多項式のウェイト,次数,ベクトル場の固有値を用いた代数的な式で表され,K-ポリ安定性を具体的にチェックすることが可能となった. 2つ目は,ケーラー・リッチソリトンの漸近的安定性に関する結果である.標準計量の存在問題では,計量の空間上の汎関数で標準計量を臨界点にもつものを考え,汎関数のpropernessから導かれる様々な安定性を研究することがよくある.今回は,解析的K-ポリ安定性から量子化ケーラー・リッチソリトンと呼ばれる,Bergman計量の列が存在することを導き,さらに,これがケーラー・リッチソリトンに弱収束することを証明した.これはケーラー・リッチソリトンの存在を何らかの有限次元漸近的安定性と結びつける結果と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回得られた2つの結果は,スカラー曲率一定ケーラー計量,あるいは端的ケーラー計量の,幾何学的不変式論的安定性に関する既存の結果の拡張・類似物を与えている.したがって,これらの結果はケーラー・リッチソリトンの存在問題と幾何学的不変式論的安定性を結びつける上で重要な指針となり得る.
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Strategy for Future Research Activity |
ケーラー・リッチソリトンを幾何学的不変式論的観点から考察し,偏極一般化の構成を図る.具体的には,各種汎関数に対して無限次元幾何学的不変式論による形式的な解釈を与える,量子化ケーラー・リッチソリトンの列の存在に対応する漸近的Chow安定性の構成などが挙げられる.
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