2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦前・戦後を通じてみる近現代日本の議会制度に関する研究
Project/Area Number |
13J03290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 武弘 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 二院制度 / 衆議院 / 貴族院 / 参議院 / 第二次護憲運動 / 両院縦断 / 議院改革 / 代表制 |
Research Abstract |
本課題の目的は、戦前戦後を通じた視野で近現代日本における議会史を再検討する事である。具体的には、第二次護憲運動から戦後の55年体制成立の時期を素材とし、とくに議会制度改革や議会観に着目して検討する。 かかる問題意識に基づき、本年度は、とくに第二次護憲運動後政党内閣期における議会改革をめぐる諸論議(とくに貴族院改革論)および、政党内閣崩壊後、1938年に設置された議会制度審議会における諸論議を比較的に検証すべく、貴族院会派火曜会に代表される議会制度改革運動の主導者たち、また各種新聞、雑誌などの史料について集中的に収集、検討を行った。主に調査した史料は「有馬頼寧関係文書」、『有馬頼寧日記』、『木戸幸一関係文書』、『青票白票』(火曜会など貴族院議員有志が発行した雑誌)、「近藤英明関係文書」など未刊行のものを含む議会関係者の諸資料、および地方紙を含む各種新聞、雑誌などである。 これらの調査の結果、第二次護憲運動後の衆議院優位下の政党内閣期においては、衆議院をめぐる改革論は選挙区の問題などの具体的問題に限定される傾向が強いのに対し、貴族院改革論は比較的活発に論じられたこと、貴族院をめぐる議論は多岐にわたるものの多くは、その職分論(政党政治の「党弊」を抑制すること)を強調しつつ、実際政治への貴族院の参加を警戒し、事実上政治への「不参加」を求める傾向が強いこと、しかし、政党内閣期が崩壊し議会制度自体が危機に立たされる1930年代後半においては、議会制度改革をめぐる議論は活性化し、とくに貴族院をめぐっては、従来の政治不関与を求める内容から、むしろ衆議院と並ぶ新たな代表機関としてその構成を再編一たとえば職能代表論として貴族院を改造する事により、両院で議会制度の「代表制」をより回復、増進し、これにより議会制度の危機を克服することを訴える議論などが現れること、などを明らかとした。これらの成果は学術論文として執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当計画では、2年目以降に行う予定であった戦後の参議院制度に関する史料集を前倒しで行うなど、史料の調査検討という点では、研究計画を以上に研究が進行した。また、本年度の成果については、すでに論文を準備、投降中であり、①とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大正末期から昭和戦前期にかけての議会制度改革運動や議会制度をめぐる政治動向について、さらに検討を加えつつ、これらの議論が戦後の議会制度、とくに参議院制度にいかに連続するかという点に注目する。その際、特に重視するのは戦前に形成された議会制度、二院制度に対する認識が戦後に与える影響である。このため、政治家の資史料はもちろん、地方紙を含む新聞資料や雑誌資料などの言説も重視し、出来るかぎり広範な史料から網羅的な検討を行うことを今後の方針とする。
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Research Products
(1 results)