2014 Fiscal Year Annual Research Report
戦前・戦後を通じてみる近現代日本の議会制度に関する研究
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13J03290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 武弘 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 議会制度 / 両院関係 / 参議院 / 衆議院 / 貴族院 / 政党政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度まで取り組んだ戦前における議会制度研究と関連させつつ、戦後議会制度とくに参議院制度の研究に取り組んだ。 具体的には、従来から法制史的に行われてきた参議院制度成立過程の研究に、新たに当該期における知識人の論説や新聞・雑誌メディアにあらわれる世論などの視線を加えることで、より多面的に検討することを試みた。また、同様の視点から55年体制の成立期までを通じて当初の議論がどのように変化するのかを追うことで、参議院の位置づけがいかに変化し、それがいかなる意味をもつのかにつき検討した。 これらの調査の結果、参議院制度に対して当初向けられた期待は、当局者・世論ともに戦前の貴族院改革論における議論を引き継ぎ、衆議院に対する歯止め役、衆議院の「数」に対する「良識」の対置を求める点で一致していたこと、全国区の選挙制度が地縁とは異なる代表理念という点から上記の要請を制度的に担保するシステムとして期待されていたこと、参議院の内部においては旧貴族院から参議院議員に転じた者にとくに参議院の理念に対するこだわりが強く観測されること、参議院の初期においてはこうした理念が法案審議に対す態度などに影響を与えていたこと、しかしこうした独自性の発揮が政権政党側から徐々に障害とみなされ参議院政党化の動機となったこと、そうした実際政治の展開が逆にメディアなどにおける参議院の独自性を求める議論を喚起し、これが憲法改正論議における重要な焦点としても取り上げられていったこと、これらの過程のなかで当初参議院の独自性を担保するとみなされた全国区選挙制度が逆に「腐敗」の温床と認知されていったこと、などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
14年度は参議院制度制定期を主な研究対象とする予定であったが、結果的に55年体制成立の時期まで(部分的に60年代)まで世論に関するものを中心に史料の収集・分析作業を進め、これを発表することができた。また、平行して両院関係史・「政党化」の視点から戦前における二院制度を再検討し、戦後への展望もつなぐ論稿を発表した。一方で緑風会に関する史料収集作業がやや遅れており、次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
15年度は、緑風会関係の史料収集・分析に集中的に取り組むとともに、これを基礎に55年体制成立期における「政党化」の問題を実証的に検討することを目指す。 この際、とくに1950年・53年・56年における参議院選挙は、上記の視点から画期に位置し、しかも独立後には改憲をめぐる問題とも大きく関わることからとくに重視することとしたい。
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Research Products
(5 results)