2013 Fiscal Year Annual Research Report
「裁判所の共同体」における刑事法の原則-国際刑事司法主体の併存とその法的規律
Project/Area Number |
13J03500
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 萌 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際刑事司法 / 国際刑事法 / 国際刑事裁判所 / 「裁判所の共同体」 / 一事不再理原則 / 法原則 / 被疑者の人権 / 管轄権 |
Research Abstract |
本研究は、国際刑事裁判所(ICC)と他の管轄権との関係を規律する「補完性原則」に関連する概念についての個別的な分析により、従来の研究よりさらに包括的な「補完性原則」を確立し、「裁判所の共同体」概念の法的補完を行うことを目的とした。本年度は、同目的に対する個別的検討課題である、分野横断的な4論点についての研究を進めることを実施計画の基本とした。1、国際法の論点については, 現在関連部分を執筆中である。2、刑事政策的論点については、ICCで扱う事件数の調整等の刑事政策的観点から、「国際刑事裁判所の対象選別過程における重大性概念の機能」と題して報告を行った(科学研究費補助金・基盤研究(A)「国際刑事裁判所規程の侵略犯罪関連規定の総合的研究」侵略犯罪研究会、大阪大学、2013年1月)。3、人権法的論点については、ICCの訴追体制において、国家当局の協力によって成り立つ被疑者の身柄確保と移送の手続きにおける個人の権利について検討を行い、「国際刑事裁判所体制における被疑者の権利―国家との垂直的・補完的関係において」と題して報告を行った(国際法学会2013年度(第116年次)研究大会パネル公募分科会「国際刑事裁判所の10年―一般国際法の発展に対する貢献―」(静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップ2013年10月14日))。4、刑事法的論点については、一事不再理原則を中心に、ICCと国家の間での同原則の適用について、「国際刑事裁判所判決の国内裁判に対する一事不再理効―垂直的関係における阻害要因と促進要因の状況(一)(二・完)」と題した諭文を投稿し、査読を受けたうえで受理され、掲載された(『阪大法学』第63巻第1号127-148頁、第2号261-272頁(共に20131年))。また、よりICC特有の問題である補完性原則そのものについての新判例について分析を行い、成果は判例評釈として投稿し、受理された(『阪大法学』第64巻1号(2014年))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画1年目にたてた目標4点のうち、3点について複数の業績を発表している。残りの1論点についても、実質的に2年目の研究計画を計画通り実施出来うるだけの資料収集と論点整理が実現している。したがって、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究計画は、「裁判所の共同体」理論の法的補完に関し、仮説的事態の検討を重ねるための素地として、現在存在する国際刑事司法主体の概観を試みる。そのため多くの文献資料の収集を試みる。加えて、1年目の成果と合わせた包括的な研究を進めると同時に、国際的刑事裁判所判例の整理を行う。研究計画の変更として特筆するものはない。
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Research Products
(8 results)