2013 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム損傷応答ネットワークにおけるDDB2タンパク質の機能解析
Project/Area Number |
13J03688
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 翔太 神戸大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | DDB2 / ヌクレオチド除去修復 / 色素性乾皮症 / XPE / アセチル化 / ユビキチン化 |
Research Abstract |
DDB2 (XPE)は、皮膚がんの高発を特徴とする遺伝病である色素性乾皮症E群の原因遺伝子産物の一つであり、紫外線によって発生するDNA損傷に対して特異的に結合し、ヌクレオチド除去修復(NER)反応の開始に必須であるXPC複合体をリクルートする重要な因子である。研究代表者はDDB2のN末端テール領域におけるさまざまな翻訳後修飾が細胞の紫外線応答に影響を与えることをすでに見出しており、これら翻訳後修飾が細胞応答を制御するメカニズムを明らかにするため翻訳後修飾特異的な相互作用因子の探索を行った。HeLa細胞を親株としてHAタグを融合した野生型DDB2、N末端テール領域を欠失した変異DDB2、N末端テール領域の全てのリジン残基をグルタミンに置換したアセチル化ミミックDDB2を過剰発現する細胞株を樹立した。これらの細胞株を大量培養した後、抽出液を調製し、タグを利用したアフィニティー精製を用いて相互作用因子を含む複合体を単離した。これらを質量分析により解析したところアポトーシスや細胞周期の制御に関わる新たな相互作用因子が同定された。一方、細胞を紫外線処理すると、DDB2がN末端テール領域のユビキチン化を介して分解されることが知られているが、XPC欠損細胞では正常線維芽細胞と比べてこの分解が著しく亢進していることを新たに見出した。精製タンパクを用いて無細胞実験を行った結果、XPC複合体の添加に従ってDDB2のユビキチン化が有意に抑制されることがわかった。すなわちXPCはDDB2のN末端テール領域におけるユビキチン化を阻害することでプロテアソームによる分解を抑制し、DDB2の安定性とNER活性の維持に寄与する可能性が示唆された。DDB2の新たなメカニズムが解明されることは、色素性乾皮症の理解が深まるとともに紫外線防護法の開発を促進する上でも重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったDDB2の翻訳後修飾特異酌な相互作用因子を含む複合体を単離し、質量分析によりアポトーシスや細胞周期の制御に関わる新規相互作用因子をいくつか同定したとともに、N末端テール領域におけるユビキチン化がXPCによって抑制されるDDB2の安定性を担う新たな制御機構を見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた相互作用因子の中からさらに絞り込みを行うため、ダブルタグを融合した変異DDB2を同様にHeLa細胞に発現させ、その全細胞抽出液からタブルダグを用いたアフィニティー精製により複合体を単離し、質量分析によって相互作用因子の同定を行う。その後、同定された因子を細胞内で過剰発現、あるいは発現抑制を行うことで、DDB2のN末端テール領域の翻訳後修飾特異的な相互作用因子が細胞の紫外線応答に与える影響を明らかにする。一方、XPCによるDDB2の新たな制御機構をより詳細に調べるため、精製タンパク質を用いてXPCとN末端テール領域との相互作用を調べるとともに、XPCがN末端テール領域におけるユビキチン化以外の翻訳後修飾に与える影響も明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)