2013 Fiscal Year Annual Research Report
反応速度論的アプローチによるオゾン-アルケン大気酸化反応機構の再評価
Project/Area Number |
13J03807
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内田 里沙 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オゾン―アルケン反応 / OHラジカル / 反応メカニズム / 収率測定 |
Research Abstract |
本研究課題では, オゾン―アルケン反応の初期過程に関わる素反応の情報を得ることで, 反応メカニズムの解明を目指している. 本反応では, 初めにアルケンの二重結合にオゾンが付加したオゾニドが生成されるが, それは直ちに分解され, 中間体とアルデヒドが2組生成される. そして, この中間体がさらに分解し, OHラジカルが生成されることが知られている. 反応メカニズムを解明するためには, 中間体の生成分岐比や中間体からのOHラジカルの生成能に関する情報が必要である. 特に分子内に置換基(アルコール基やアルデヒド基など)を有する化合物に関する情報が不足していることから, H25年度はcis-3-Hexene類(3HX)のオゾン反応系における中間体の生成分岐比とOHラジカル生成収率を求めた. 3HXには, 基本形となるcis-3-hexene (3H), アルコール基を有するcis-3-hexen-1-ol (3HO), アルデヒド基を有するcis-3-hexenal (3HA)を用いた, 実験は国立環境研究所の光化学チャンバーを用いて行った. 実験の結果, 置換基を有することで分岐比やOHラジカル生成収率に影響を与えることが確認できた. 特にアルデヒド基を有する3HAに関しては, 置換基を有する中間体が生成され易く, さらに, その中間体からのOHラジカル生成収率が他に比べて高くなることがわかった. このようにオゾン―アルケン反応において, 置換基の存在が分岐比やOHラジカル生成収率に与える影響に関する評価結果は, 今回初めて得られたものであり, 今後置換基を有する化合物のオゾン酸化反応のメカニズムを考える上で重要な情報となる. 本研究内容を国際会議(29^<th> Symposium on Chemical Kinetics and Dynamics)で発表し, ベストポスター賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り, 光化学チャンバーを用いた実験により, オゾン―アルケン反応の初期過程に関する情報を得るための方針を確立することができた. 本実験に関する論文を現在執筆中である. また, レーザー誘起蛍光法(LIF)や光イオン化質量分析計(PI-MS)を用いた予備実験を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
LIFとPI-MSの予備実験を行った結果, LIFを用いた実験が有効な手段であることがわかったため, 今後は本装置を用いてOHラジカルの直接測定およびVinoxyラジカル(OHラジカルの対生成物)の直接測定に着手していく予定である. 現在執筆中の論文は夏までに投稿予定である. また, チャンバー実験での研究内容を国際学会(23rd International Symposium on Gas Kinetics and Related Phenomena)にて発表する予定である.
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