2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるミツバツツジ節の系統進化と適応放散・地域固有化の要因を探る
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13J04197
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 洋一 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 進化生態 / 集団遺伝 / 自然選択・遺伝的浮動 / ツツジ属(Rhododendron) / 木本の多様化 |
Research Abstract |
本研究では、東アジアに分布し日本で多様化しているミツバツツジ節を対象としてその進化過程を明らかにし、日本に分布する種が適応放散と地域固有化をするに至った要因を探索することを目的としている。本年度は、既に収集していた日本・韓国のサンプルに加え中国・台湾より採取したサンプルの葉緑体DNAと核DNA塩基配列を決定し、①ミツバツツジ節と最近縁の姉妹節であるヤマツツジ節の系統関係と進化の歴史を推定、②ミツバツツジ節全種の種内・集団内変異を推定し、日本・韓国の種と中国・台湾の種の遺伝的多様性の違いを明らかにした。 その結果、ミツバツツジ節の現生系統は第四紀が始まった約三百年前より多様化し始めたことが明らかになった。つまり、第四紀における気候変動がミツバツツジ節の多様化に大きな影響を与えていることを強く示唆するものである。また、日本・韓国と中国・台湾に分布する種は完全に異なるがそれぞれは単系統とならず祖先系統のランダムな絶滅もしくは両地域間の移住により系統が創り出された可能性が示唆された。日本の第三紀地層からミツバツツジ節の化石が発見されているため、おそらく第三紀には東アジアに広く分布した祖先系統のいくつかが第四紀より始まった気候変動により絶滅したと考えるのが妥当と思われる。集団解析より、多くの地域固有種・希少種は低い集団内変異を示し、日本に分布する多くの地域固有種・希少種が進化するきっかけが遺伝的浮動である可能性が考えられる。日本・韓国と中国・台湾における遺伝的分散を比較すると、日本・韓国の種では集団内変異が低く集団間分化が高いのに対し、中国・台湾では集団内変異が高く集団間分化が低い傾向が確認され、日本に分布する種は全体的に遺伝的浮動の影響を受けやすいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、すでに解析していた日本・韓国のサンプルに加え中国・台湾のサンプルを収集し遺伝解析を行った。本年度で中国大陸における分布を網羅するすべての集団サンプルを採取することはできなかったが、非常に広大な分布を持っているため次年度に追加のサンプルを得る必要がある。一方、遺伝実験は順調に進み葉緑体DNAと核DNAの解析領域は決定できたため、次年度の追加サンプルを加えた実験・解析はそれほど負担とはならない。また、本年度はESTライブラリの構築とそれらから集団解析に用いるプライマーの設計も行えたため、次年度はこれらを用いて様々な遺伝実験・解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の進捗では、中国内陸部のサンプルが不足しており中国大陸における遺伝的多様性を過小評価している可能性が高い。そこで、次年度は不足している中国におけるサンプルを採取して解析を完結させる。また、少数の核遺伝子座では詳細な種内の変異と集団間の系統関係を明らかにするのが困難なため、制限酵素認識サイト近隣領域多型解析(RAD)とアンプリコンシークエンスを次世代シークエンサーで行い、より詳細な集団遺伝学的な解析を行う。
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Research Products
(2 results)