2013 Fiscal Year Annual Research Report
マルテンサイト系ステンレス鋼における焼入-分配処理の基礎原理解明と応用技術開発
Project/Area Number |
13J04263
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
戸畑 潤也 九州大学, 材料物性工学専攻, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルテンサイト系ステンレス鋼 / 焼入-分配処理 / 残留オーステナイト / 炭化物 / ベイナイト変態 |
Research Abstract |
本研究では、焼入-分配処理をマルテンサイト系ステンレス鋼に施すことによって残留オーステライトの生成が可能であることの証明、残留オーステナイトの生成機構の考察、ならびに残留したオーステナイトが及ぼす機械的特性への影響を明らかにすることを目的としている。これまで焼入-分配処理を汎用マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS410 (Fe-12Cr-0.1C)に適用すると、約15%の残留オーステナイトを室温まで残存でき、強度-延性バランスを改善できることを明らかにしてきた。平成25年度は、マルテンサイト系ステンレス鋼に多量に含まれるCrが焼入-分配処理中の組織変化に及ぼす影響の調査を行った。 Cr含有量が3、6、11%となるように合金設計した鋼(3Cr鋼、6Cr鋼、11Cr鋼)を作製し、残留オーステナイトの生成挙動を調査した結果、Crは焼入-分配処理によって生成する残留オーステナイト量を増加する効果があると確認された。次にCrが残留オーステナイト量を増加する原因を明らかにするために炭化物生成挙動およびベイナイト変態挙動の調査を行った。示差走査熱量測定(DSC : Differential scanning calorimetry)試験を用いて、炭化物生成挙動に及ぼすCrの影響を調査した結果、Crは炭化物の析出を遅延することが明らかとなった。全自動変態点記録装置(Formaster)を用いて、ベイナイト変態挙動に及ぼすCrの影響を調査した結果、Crはベイナイト変態を抑制することが明らかとなった。 以上の結果より、Crが炭化物の析出を遅延およびベイナイト変態を抑制するため、多量のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼は焼入-分配処理により多量の残留オーステナイトを生成することできることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究では、今まで明らかにされていなかった焼入-分配処理におけるマルテンサイト系ステンレス鋼中のCrの影響が明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究では、本研究の目的の1つある残留したオーステナイトが及ぼす機械的特性への影響について詳細な調査を行っていくことを予定している。具体的な内容としては、残留オーステナイトを含む鋼の機械的特性は、残留オーステナイト量だけでなく残留オーステナイトの安定性にも大きく影響を受けることが知られていることから、焼入-分配処理したマルテンサイト系ステンレス鋼の機械的特性に及ぼす残留γの安定性の影響を調査する。
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