2014 Fiscal Year Annual Research Report
マルテンサイト系ステンレス鋼における焼入-分配処理の基礎原理解明と応用技術開発
Project/Area Number |
13J04263
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
戸畑 潤也 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マルテンサイト系ステンレス鋼 / 焼入-分配処理 / 残留オーステナイト / 窒素 / 炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、 焼入-分配処理をマルテンサイト系ステンレス鋼に施すことによって残留オーステナイトの生成が可能であることの証明、残留オーステナイトの生成機構の考察、ならびに残留したオーステナイトが及ぼす機械的特性への影響を明らかにすることを目的としている。これまで焼入-分配処理を汎用マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS410(Fe-12Cr-0.1C)に適用すると、約15%の残留オーステナイトを室温まで残存でき、強度-延性バランスを改善できることを明らかにしてきた。平成26年度の研究では、高強度かつ高延性・高靭性な耐食材料を開発することを目標とし、それぞれ炭素と窒素を同程度に単独添加した’系ステンレス鋼(炭素鋼:Fe-0.12C-12Cr,窒素鋼:Fe-0.15N-12Cr)に対して焼入-分配処理を適用し、残留オーステナイトの生成挙動対する炭素と窒素の効果の相違を明らかにすることを目的としている。 分配処理を施した試料においてはいずれの試料においてもオーステナイトが残留しており、窒素マルテンサイト系ステンレス鋼においても、焼入-分配処理を用いることで残留オーステナイトの生成が可能であることが確認される。また、炭素鋼と窒素鋼を比較すると、炭素鋼のほうが全体的に残留オーステナイト体積率は大きいことが確認される。よって、窒素鋼は、炭素鋼と比較して焼入-分配処理による残留オーステナイトの生成が困難であることが分かる。これは、炭素は窒素と比較してオーステナイトの安定性を向上させる効果が大きいことが原因であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究では、今まで行なわれた例がない窒素の単独添加での焼入-分配処理が可能であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究では、本研究の目的の1つある残留したオーステナイトが及ぼす機械的特性への影響について詳細な調査を行っていくことを予定している。具体的な内容としては、残留オーステナイトを含む鋼の機械的特性は、残留オーステナイト量だけでなく残留オーステナイトの安定性にも大きく影響を受けることが知られていることから、焼入-分配処理したマルテンサイト系ステンレス鋼の機械的特性に及ぼす残留オーステナイトの安定性の影響を調査する。
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