2013 Fiscal Year Annual Research Report
考古学的コンテキストからみたシャブティの副葬行為に関する研究
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13J04343
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
熊崎 真司 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2015-03-31
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Keywords | シャブティ / 古代エジプト / 新王国時代 / 副葬品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来美術史的な観点から研究されることの多かったシャブティを、実際に発掘調査時に確認されたコンテキストを重視する形で扱い、その副葬品としてのあり方を再検討しようとするものであった。特に対象としたのは新王国時代のシャブティであり、これらの遺物が副葬されるまでにどのような過程を経たのか、当時の社会の中でどのように位置づけられるものであったかの理解を目指すものであった。 初年度にあたる平成25年度は、研究の基礎となるデータの集成を主体に研究活動を行った。発掘調査時の出土状況に関する記述を伴う資料の集成を第一、そうした情報を伴わないものの、同時代資料として認められる資料の集成を第二として、図録や学術書、各国研究組織が公開するデータベースから広く類例の集成を行った。 こうした資料の蓄積から、シャブティに伴う諸特徴の通時的変化の体系化、また、それらがどの地域のどの墓からどのような状況で発見されたのかという観点からの検証を行いつつ、データベース化を進めた。 こうした基礎処理を元に、ラメセス2世時代の事例を扱った研究成果を「古代エジプトにおけるシャブティ所有点数と質的変化」と題する論文として『古代』に発表した。ここでは、被葬者の死亡時期を利用したシャブティの短期編年を踏まえつつ、シャブティ点数やシャブティの質的側面の通時的な変化を追い、より多くのシャブティが求められる一方で、被葬者の経済力が弱まっていく、そうした中で、より安価なシャブティの選択、獲得が進んでいった過程を示し、ラメセス2世時代に起こったこうした変化が、後の時代に進行するシャブティの急激な増加の要因を説明する1つのケーススタディーとなり得ることを指摘している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の計画は、今後の研究推進に向けたデータ集成を中心としたものであり、データベースの構築、また、データを活用した事例研究の実施という観点から見れば計画通りの進展をみたといえる。 ただし、平成26年2月に予定していた資料調査については、平成26年1月にエジプトの情勢が悪化した影響を受け、エジプト政府からの許諾が得られなくなったため、実施を見送った。こうした点から見れば、当初平成25年度に予定していた計画を満了したと判断することが出来ないため、このような自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度については、資料の集成、データベースの構築といった面で進展をみた。しかし、計画していたエジプト・アラブ共和国における現地調査が政情不安によって中止になったことで、当初予定していた、初年度末の調査成果を踏まえた研究の推進は困難となったため、次回調査の実施までは、自身の集成したデータを中心とする研究の推進に計画を変更する必要があると考えた。また、今後は、国内外博物館における資料の収集も並行して進めていくべきであると考えた。
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Research Products
(1 results)