2013 Fiscal Year Annual Research Report
ホモトピー論の、グラフのクロマティック数の計算への応用
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13J04699
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松下 尚弘 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グラフ / グラフ準同型 / クロマティック数 / 近傍複体 / ホム複体 / 基本群 |
Research Abstract |
正の整数rに対し、点付きグラフに対するr基本群を定義し、その応用と基本的性質について調べた。またグラフに対してr近傍複体という単体的複体を定義し、その基本群がr基本群の偶数部分と呼ばれる部分群に同型になることを示した。特にr=1のときは、本研究で示す予定であった近傍複体の基本群と2基本群の偶数部分の同型に対応する。 二つのグラフの間のグラフ準同型の存在性・非存在性を示すということは、グラフ理論における基本的かつ重要な問題であるが、r基本群はその問題に応用することができる。実際、本研究で得られた定理をにより、KneserグラフK_{2k+1, k}の3基本群がZ/2Zになることを計算し、K_{2k+1, k}から5サイクルグラフC_5へのグラフ準同型が存在しないことを示せる。 またグラフT, Gから構成される単体的集合Sing (T, G)(特異複体と名づけた)を定義し、その基本的な性質について調べた。特にSing (T, G)の幾何学的実現はホム複体Hom (T, G)にホモトピー同値であることを示した。このことからHom (T, G)のホモロジー群が、位相空間の特異ホモロジー群と同様に、ある組合せ論的に得られるチェイン複体のホモロジー群に同型になることが得られ、ホム複体のホモロジー群に別の定式化を与えることができたという点で重要である。特にT=K_2のときはSing (K_2, G)はGの近傍複体にホモトピー同値になるため、近傍複体のホモロジー群が得られる。このことは研究計画において書いた位相空間の特異ホモロジー論の、グラフの場合の理論といえる。 この他に、stillと言われる性質を持つグラフG, Hにおいて、近傍複体が同型であることがK_2×GとK_2×Hがグラフとして同型であることを示し、応用として近傍複体が同型であるにも関わらずクロマティック数が違う例を構成した。さらにグラフ準同型G→Hで、箱複体に誘導される写像B (G)→B (H)がZ_2ホモトピー同値であるにも関わらず、GとHのクロマティック数が異なる例を構成した。これは近傍複体と箱複体の(Z_2-)ホモトピー不変量がクロクティック数と同値でないことを示す重要な例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究予定に書いたことをかなりの部分を示すことができた。たとえば「Hom (K_2, G)の基本群と2基本群の偶数部分に同型であること」「特異ホモロジー理論のグラフにおける構成」などを、一般化した形で示すことができた。さらに2基本群の理論を、正の整数rに対するr基本群の理論に拡張することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
r近傍複体の基本群の組合せ論的な定式化が得られたが、高次のホモトピー群に関しては未だわからないので、その組合せ論的な表記を得ることを目標とする。 また、本研究を通じてグラフの局所的な性質が大域的な性質を決定することに気付いた。すなわち、グラフGの各点vに対し、N(v)とN_2(v)の個数に制限を設けると、その局所的性質からグラフGが有限グラフであることが導かれたり、近傍複体のホモトピー型が決定され, クロマティック数がわかることがあることを発見した。今後、この方針の研究を推し進め、グラフのクロマティック数という大域的なグラフの性質が、局所的な性質から導かれることを示したい。
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Research Products
(1 results)