2013 Fiscal Year Annual Research Report
近接場光がもたらす半導体および単一分子の光励起増強機構の光STMによる解析
Project/Area Number |
13J04934
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
数間 恵弥子 独立行政法人理化学研究所, Kim表面界面科学研究室, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 光STM / 局在表面プラズモン共鳴 / 光異性化分子 |
Research Abstract |
本研究は、局在表面プラズモン共鳴に基づく近接場(局在電場)における半導体および分子の応答挙動の解析および光励起増強の機構解明を目指す。 初年度にあたる本年は、(1)極低温STMに外部からの光照射を組み合わせた光STMの立ち上げと評価、(2)強い近接場を生じる系の設計と構築、㈲今後対象とする光異性化分子について、トンネル電子注入による反応挙動の解析を行った。(1)では、光学系を組みSTM探針直下への光照射を可能にした。本研究で適用する光強度の範囲では、熱によるドリフトがなく安定して測定ができることを確認した。(2)では、時間領域差分法に基づく理論計算により、可視域に強い近接場を生じる系の最適化を行った。基板上に蒸着する金属ナノ粒子の形態は、当初予測していた異方性粒子よりも半球状粒子の方が本系に適しており、導電性基板には白金またはHOPG基板が有効であった。さらに、STM探針に通常のタングステンではなく銀を用いることで、ナノ粒子を導入するよりも数倍強い光増強電場が生じ、さらに探針一粒子間のギャッププラズモンを利用すれば、入射光に対し最大100倍の増強が生じると予測された。これらの結果から、現在Agナノ粒子の蒸着条件の最適化とAg探針の作製に着手している。(3)では、近接場における分子の反応挙動と比較するため、STMからのトンネル電子注入によるアゾベンゼン誘導体単-分子の異性化反応を解析した。Ag (111)上に真空蒸着した分子は2つの安定なシス体(A, B)の構造をとり、STMのトンネル電子注入によってシスートランスの可逆な異性化反応が達成された。シス体(A)では面内での反転に起因する変化が、一方、シス体(B)では反転または面外での回転に起因する変化が観測され、分子の構造によって反応機構が異なることが示された。今後、近接場における分子の反応挙動を解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始から約4か月以内に光STMの立ち上げと評価を完了し、実験基盤を整えた。強い近接場を生じる系の設計を理論計算により行い最適化が完了した。対象とする系として光異性化分子であるアゾベンゼン誘導体を選択し、近接場における反応の対照実験としてトンネル電子注入による反応挙動の解析を終了した。機構解明のための最も効果的な系を精査した結果、計画に一部変更を生じたが、進捗状況は当初の予定と同程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論計算から、Agナノ粒子だけでなくSTM探針にAgを用いることで近接場効果がより顕著に表れると期待された。一方で、探針の先端付近で励起されるプラズモンは探針形状に大きく依存するため、精密に規定された探針を作製する必要がある。現段階では、探針を電気化学的手法により作製しているが先端形状の制御が困難である。 今後、集束イオンビームによる加工を導入し、より強い近接場を生じる探針を作製する。最適な探針を作製後、近接場におけるアゾベンゼン誘導体分子の反応挙動を解析する。近接場効果の解析を行う上で、近接場と分子の距離依存性だけでなく、より低エネルギーの光を用いた多光子励起の可能性についても検証する。
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Research Products
(4 results)