2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国型福祉レジーム形成過程の実態解明-農村部と都市部における社会保障改革を中心に
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13J05085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徐 尭 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / 公的医療保険 / 実施効果 / 利用者世帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
「新型農村合作医療」と名付けられた中国の公的医療保険に対して、遼寧省の西部にあるK市を調査地に、制度利用経歴のある農村部住民を対象に面接調査を実施し、調査データを多変量解析によって実施効果の各種規定要因を検討してきた。 調査の実施については、2013年から2014年前半の間に当制度により入院補償を受けた農村部住民を母集団とし、層化多段抽出法により300人をランダムサンプリングする。面接調査票は人口学的変数、世帯基本状況、公的医療保険の利用経歴、制度評価からなる項目を中心に作成した。2014年の7月に面接調査を実施し、210件の調査票を回収した。分析の段階については、調査票から得られたデータに対して多変量解析を行った。記述統計に関しては、加入料満足度の平均値が0.21、入院補償率満足度のそれが0.63、外来診療補償率満足度のそれが-0.51、補償範囲満足度のそれが-0.48である。上記の4項目に対して因子分析の得点を実施効果の従属変数とし、重回帰分析によりその影響要因を測定するためには、人口学的変数モデル、世帯基本状況モデル、医療利用経歴モデル、全モデルなど4つのモデルを立った。結果、従属変数の効果評価に対しては、10%の有意水準で世帯人数が負の効果、主な収入源が正の効果、居住地域発展水準が負の効果、制度以前の医療支出が負の効果、自己評価の医療(外来・入院)支出軽減レベルが正の効果、制度理解度が正の効果、入院費用自己負担額が負の効果であるが、それ以外の規定要因の直接効果が認められなかった。 現行の新型農村合作医療には、加入者全体としての医療費用は減少しない(Wagstaff et al. 2009)と論じられたように、農村部住民にとって「看病難」は緩和されたものの、「看病貴」は依然として残っている。今後の課題としては、公的医療保険を中国医療システム改革に結びついて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は中国の農村部公的医療保険を中心に研究を進めた。これまでに実施してきたフィールド調査も継続しているが、今年度は大規模な面接調査を行うことにより制度の実施効果をより明確に把握できた。ただし、今年度は入院補償を受けた農村部住民を母集団にサンプリングして面接調査を行ったが、平成27年度には外来診療補償を受けた住民にも調査対象に入れる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
中国社会保障システム改革の一環でありながら医療システム改革の一環である農村部公的医療保険に対して、遼寧省と山西省で行ったフィールド調査及び面接調査を継続するほか、計画経済時期の医療保険と時間軸における比較と考察、都市部公的医療保険と空間軸における比較と考察、公的医療補助または商業医療保険との関係などを総合的に検討する。
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Research Products
(2 results)