2013 Fiscal Year Annual Research Report
被子植物における花メリステムの有限性制御機構の解明
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13J05127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 若奈 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メリステム / 花 / 有限性 / 無限性 / 腋芽 |
Research Abstract |
本年度は, イネにおける花メリステムの有限性の制御メカニズムを明らかにすることを目的とし, 花メリステムが早期に有限となるearly termination (et)(仮称)変異体の解析を行った. etの穂の, 一次枝梗あたりの二次枝梗数と小穂数を野生型のものと比較した結果, etにおいて有意な減少が認められた. これらの結果から, ET遺伝子が枝梗や小穂の分化に関与している可能性が示唆された. etの小穂においては, 多面的な異常が観察された. 約15%の小穂が, 副護穎あるいは護穎を形成した後, 早期に停止していた(早期に有限となっていた). そこで, etの小穂メリステムにおける未分化細胞のマーカーであるOSH1の発現パターンを調べた. その結果, OSH1の発現量が低下した小穂メリステムがいくつか観察された. この結果から, ETが, 小穂メリステム(花メリステム)の無限性を維持するために必要である可能性が示唆された. また, etの小穂の中には, 側生器官の形態に異常が生じているものも観察された. この結果から, ET遺伝子は, 小穂側生器官の発生にも関与している可能性が示唆された. さらにetでは, 栄養成長期において, 分げつ形成が阻害されることが判明した. ET遺伝子の時間的・空間的発現パターンを解析した. まず, 枝梗分化期の幼穂における発現を調べた結果, 全ての枝梗メリステムの先端部でパッチ状の発現が認められた. また, 花器官分化期の小穂メリステムにおいても, 同様の発現パターンが認められた. これらの発現は, 幹細胞が存在する領域と重複しているように観察された. 一方, 花器官での発現は認められなかった. 以上の解析から, ET遺伝子が, 花メリステムの有限性制御に関与している可能性, そして, 腋芽メリステムの発生を制御している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画内容におおむね従い, et変異体の表現型解析, 原因遺伝子の確認(相補性検定・ノックダウン個体の作製および観察)そして, 遺伝子の機能解析(発現パターンの解析)を遂行した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から, ET遺伝子が花メリステムの有限性制御に関与している可能性が示唆されたため, 今後は既知の有限性制御遺伝子との関係を明らかにする. また, et異後体では, 小穂(花)だけではなく, 分げつ(腋芽)の発生にも異常が生じていることが判明した. 今後は, 分げつの表現型についても着目し, 詳細な観察を行う予定である.
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Research Products
(2 results)