2013 Fiscal Year Annual Research Report
システム生理学に基づく腎神経焼灼術の機序解明とバイオニック心不全治療への応用
Project/Area Number |
13J05473
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐田 悠輔 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高血圧 / 交感神経 / 自然発症高血圧ラット / 腎臓除神経 / 圧反射 / 開ループ |
Research Abstract |
本研究は、制御工学を足がかりとして「経カテーテル的腎臓交感神経焼灼術」の循環調節異常是正効果を検証し、治療機序の解明を行うものである。種々の循環器疾患に伴い変容した循環調節機能は、動脈圧反射の特性のもとに、自律神経活動および体血圧の変化として現れることが知られている。詳細な動脈圧反射解析のために、我々は体血圧とは独立した圧入力を頚動脈圧受容体に加え、交感神経活動および体血圧の変化を測定する実験系(開ループ実験)を確立した。 麻酔下の自然発症高血圧ラット(SHR)、正常血圧ラット(WKY)、フェノールを用いた腎除神経を施行されたSHR (RD-SHR)に対して、頚動脈圧受容体を体循環から切り離し、同部位にサーボポンプにより任意の圧入力を行った。その他の反射を除外するため、迷走神経は頚部で切離した。同時に、腹部内臓交感神経活動と体血圧を計測し、頚動脈圧(CSP)と交感神経活動(SNA)の関係を中枢弓、交感神経活動と体血圧(AP)の関係を末梢弓として記述した。 WKY, SHR, RD-SHRいずれも、CSPの上昇に対してシグモイド曲線状にAPの低下が認められた。末梢弓に関しては、SNAとAPの関係はいずれもリニアな関係にあり、それぞれの傾き、切片ともグループ間の有意差は認められなかった。一方、中枢弓に関しては、CSPに対するSNAの変化はWKYに比べてSHRで大きく、WKYとRD-SHRとの間には有意差は認められなかった。中枢弓と末梢弓との交点により求められる動作点のAPはそれぞれ、WKY111.3±4.4mmHg, SHR145.1±5.7mmHg, RD-SHR136.6±6,9mmHgであった。 以上の結果から、腎除神経には血圧とともに交感神経活動を低下させる効果があることが明らかになった。その際末梢弓の特性には変化はなく、中枢弓の左方シフトによる降圧効果が主体であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年1月に米国の大規模臨床試験の中間報告が発表され、腎神経焼灼術のヒトでの効果を疑問視する内容が報告された。これに伴い、本研究課題においても同術の治療効果の詳細な検証を計画する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
米国臨床研究の結果を受けて、臨床研究の詳細な解析を行い、腎臓除神経の降圧効果が明瞭である臨床背景および腎神経焼灼の条件などを検証する必要が生じた。また、経カテーテル的腎除神経によってどの程度の除神経が達成されているのかを確認する動物実験を行う必要もある。その上で、段階的な腎神経焼灼術の効果を検証し、病態や重症度に最適化した治療法の開発に取り組む計画である。
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Research Products
(3 results)