2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J05557
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
飯田 早苗 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子情報処理 / 量子制御理論 / ロバストシステム同定 / ロバスト制御 / Decoherence Free Subspace / 量子テレポーテーション |
Research Abstract |
本課題の目的は, 量子情報処理の実用化に向け, 現実的な量子系のもつ「不確かさ」や「ダイナミクス」も含めて, 対象量子系の状態を同定する手法を確立することである, この目標の達成に向け, 申請者は次の4つの研究を行った. 1. 線形量子系のレーザー位相不確かさに対するロバストシステム同定および制御 線形量子系の測定を行うためのレーザーに「位相不確かさ」がある場合, レーザー位相に対してロバストな推定・制御機構が必要となる, 申請者は, 適応カルマンフィルタ及びLQG制御器を構築し, この課題を解決した. 2. 線形量子系のロバストシステム同定 : 入力と測定の最適化 線形量子系の情報を得る際, システム同定の意味で最適な入力状態と測定方法を選定する必要がある. 申請者は, 入力として強い量子性を持つ「スクイズド状態」と「エンタングルド状態」を選び, 各々の測定を最適化したうえで, 出力の情報量の変化を解析した. 複数のケーススタディにおいて最適な入力・測定を特定し, 各手法の情報量を増大させるメカニズムを明らかにした. 3. デコヒーレンスフリー部分空間のエラー検出 「デコヒーレンスフリー部分空間(Decoherence Free Subspace ; DFS)」とは, 量子系が環境ノイズの影響を受けない空間を指し, DFSを保守することは実用上重要である. 申請者は, DFSが壊れたとき, 量子状態に加えて未知ノイズの大きさをエラー信号として返す推定器を構築し, DFSの安定・ロバスト化を行った. 4. ダイナミカル量子テレポーテーション 現在提案されている量子情報処理のほとんどのプロトコルは, 「静的」な操作として記述されているが, 現実的な量子系は「ダイナミクス」をもつため, 「動的」なプロトコルが必要である. 申請者は, 量子情報操作のなかでも特に重要な「量子テレポーテーション」について, 既存の情報操作のプロトコルを制御理論の枠組みで捉え直し, 量子系のダイナミクスも含めてテレポートする手法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の年次計画1年目に記載した課題(研究実績記載の1・2・3)について, 課題1を達成し, 課題2・3についてもケーススタディにおいてポジティブな結果を得た, さらに, 新たに設定した課題(研究実績記載の4)について, 存外の成果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
・課題2を達成する, ケーススタディに留まらず, さらなる解析により最適化問題として何らかの一般化・定式化が可能であるか調査を進める. ・課題4を達成する, 現在, 量子状態である1スクイズド状態」「単一光子状態」のダイナミカルテレポーテーションに成功しているが, より強い量子性をもつ「シュレディンガーの猫状態」を含め, n-modeの任意の状態のテレポートが可能になるよう理論を拡張する. その際, システムの可制御性の有無がテレポートの可否を決定するという見通しを持っており, この証明を行う.
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