2013 Fiscal Year Annual Research Report
ウルツ鉱型ZnOスペーサを持つMTJの作製と電界によるMRの制御に関する研究
Project/Area Number |
13J05806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
BELMOUBARIK MOHAMED 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 磁気抵抗 / 不揮発磁気記録 / 磁気トンネル接合 / 強磁性体 / 酸化亜鉛 / 分子線エピタクシャル法 / 界面物性 |
Research Abstract |
本研究の目的は非中心対称性を持つウルツ鉱型ZnO膜に発現する自発分極を利用して、ウルツ鉱型ZnO系スペーサを持つMTJ(磁気トンネル接合)素子における外部低電界によるMR(磁気抵抗)制御の実現である。このように低電界印加によるMR制御が可能となれば、メモリの1つのセルで多値状態を実現することができるようになり、不揮発磁気記録デバイスであるMRAMの記録密度が向上されることが期待される。平成25年度では特別研究員として実施した研究活動と実績を以下のようにまとめた。 1. MTI素子のスペーサとなるウルツ鉱型ZnOに関して格子不整合の比較的小さいCo_<0.3>Pt_<0.7>薄膜上にMBE(分子線エピタクシャル)法を用いて良質な薄膜を作製することに成功した。ZnO結晶が自発分極を有するc軸配向を保ちながら下部磁気電極の磁化の悪化がされていないことが確認できた。 2. ウルツ鉱型ZnO膜がトンネル層の役割を果たすためには高抵抗率が必要となるので、ZnO結晶へのMgドープによりMgとZnイオン半径の差を利用した高抵抗率の実現を達成した。Co_<0.3>Pt_<0.7>薄膜上のウルツ鉱型ZNMgO固溶体の抵抗率が100kΩ. cmまで観測ができており、ウルツ鉱型ZnMgOがMTJのトンネル層として利用することを決定した。 3. c-Al_2O_3/Pt/CoPt/ZnMgO (7nm)/Co/Ru構造を持つMTJ試料を作製した。微細化技術を用いたMTJ素子の作製を行い、4端子法で室温(300K)と低温(5K)で磁界印加中MRの評価を行った。評価の成果は、再現性良く3~6%の磁気抵抗の観測ができており、今まで未だ報告されていない強磁性金属/酸化亜鉛系トンネル薄膜/強磁性金属の合に於ける磁気抵の実に成功した。これに加えて、印加電流の方向を反転したあるピラーでは金属/ZnMgOの界面電子状態の変化により素子のMRが反転する。この特異な現象に関する研究成果は、より詳細的な検討を行ってうえで学術論文として発表する予定である。 4. 作製したZnMgOトンネルバリア-MTJでは磁場の配置が平行と反平行に設定したそれぞれの状態に於ける電圧バイアス又は印加電界を±500mVで往復させたて測定した抵抗の変化率はバイアス電圧又は電界強度によって大きく変化し、符号の反転も観測された。その結果、電界と磁場の制御により、MgドープZnO-MTJの磁気抵抗変化率を20%まで高めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子線エピタクシャル法とスパッタ法を利用して最適化されたZnMgOトンネルバリアMTJの作製に成功した。更に、微細化技術の工夫を用いて室温(300K)と低温(5K)での磁抵抗の観測(3~6%)が出来るようにMTJデバイスのレシピを明確にしたことは今年度の大きな進歩と考える。低電界によるMRの制御に関して未だ完全に得られていないが、最近これに関係している実験データ(電界によるMRの変化と反転)を測定し始めた。観測した物理現象の起源検討と実験結果に関する再現性の確認を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は以下のように予定を考えている : 1. ZnMgOトンネルバリアMTJで界面の影響を調べるためにZhMgO薄膜の成膜温度を最適化する。ここで、成膜温度を変えてZnMgO薄膜の結晶性と電気特性は主な検討対象となる物である。 2. ZnMgOトンネルバリアの影響に関して、ZhMgOの膜厚とMg組成を変更してそれぞれのZnMgOトンネルバ. リアMTJの特性への影響を調査する。 3. MTJ素子に印加する電界を変更した時のZnMgO強誘電性を検討し、観測された磁場と電界によるMRの変化と反転現象の起源に関して物理的に解明する。 4. 1-3の結果のもと、MTJのスペーサの総合的な特性を向上させながら低電界印加による磁気抵抗の制御を用いた多値動作MTJディバイスの提案ができる様に検討する。
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