2013 Fiscal Year Annual Research Report
Calix[4]arene系ミセルの生体膜モデルとの動的相互作用のその場解析
Project/Area Number |
13J06183
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 翔太 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / Calix [4] arene系ミセル / 小角X線散乱(SAXS) |
Research Abstract |
本研究の目的は、リン脂質から成る生体模倣膜とミセル問の相互作用を検討することでミセルを構成する脂質の分子構造と機能の相関を明らかにすることである。この研究結果を用いて、高い遺伝子発現を示す最適なミセル形成分子の設計指針を提案する。 高い遺伝子導入効率を示すCaiix [4] arene系ミセルをモデルミセルとして用い、また生体模倣膜としてリン脂質からなるLangmuir-Blodgett (LB)膜を用いることとしていた。しかし、リン脂質LB膜とCalix [4] arene系ミセルの相互作用を検討する際に、LB膜が安定に保持されないという問題が生じた。そこで、生体模倣膜としてリン脂質リポソームを用いて、ミセル-リポソーム間の相互作用の評価方法には小角X線散乱(SAXS)測定を用いた。 高い遺伝子導入効率を示すカチオン性Calix [4] arene系ミセルとリン脂質リポソーム間において相互作用して新たな構造体を形成することSAXS測定により明らかにした。さらに、この相互作用はCalix [4] arene系脂質の疎水部のアルキル鎖長が長いほどより顕著になることも分かった。一般的にリン脂質の親水基であるホスホリルコリン(PC)は電荷的に中性であるため、カチオン性ミセルとは相互作用しない。しかし、Calix [4] arene系のカチオン性ミセルにおいて相互作用が確認できたことから、ミセルを構成する脂質の分子構造がリン脂質リポソームとの相互作用を誘起する一つの要因であることを明らかにした。この相互作用は等温滴定熱量計を用いた熱力学的な物性評価を行ったときにも見られ、SAXS測定結果と相補的な結果を得ることができた。一方で細胞用いた遺伝子導入実験の結果からはCalix [4] arene系脂質のアルキル鎖が長くなるにつれて高い導入効率を示すことが明らかと成っており、ミセルー細胞間の相互作用の度合いが遺伝子導入効率に大きく影響していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン脂質LB膜とCalix [4] arene系のカチオン性ミセルとの相互作用を検討する際にLB膜が安定に保持されないためにGISWAXSや液中AFMを用いた実験が困難であった。しかし、SAXS測定を用いてリン脂質リポソーム(モデル生体膜)とCalix [4] arene系のカチオン性ミセルとの間の相互作用を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
Calix [4] arene系脂質の親水部に細胞膜と強く相互作用することで知られているコリンホスフェイト(CP)基を導入した脂質を合成し、SAXS測定を主に用いてミセルとリン脂質リポソーム間の相互作用を検討する。また、疎水部のアルキル鎖の長さが異なる同様の脂質も合成し、同じようにSAXS測定によって解析する。この結果から、分子構造やアルキル鎖が与えるミセルと生体膜の相互作用への影響について新しい知見を得る。
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Research Products
(9 results)