2013 Fiscal Year Annual Research Report
αコランダム型ヘテロ酸化物薄膜の作製と電気磁気効果に関する研究
Project/Area Number |
13J06203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下村 直樹 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 電気磁気効果 / Cr2O3 / 交換バイアス / 磁気異方性 / ブロッキング温度 |
Research Abstract |
本研究では、新規な大容量・低消費電力磁気記録方式の実現を目指し、電気磁気(Magneto-electric : ME)効果を利用した電界操作型磁気記録原理の実現に向けて酸化クロム(Cr_2O_3)薄膜におけるME効果の確認と、その動作温度(ブロッキング温度 : TB)の向上を目指している。 2013 (H25)年度では、Cr_2O_3薄膜の温度特性改善に向けた結晶磁気異方性の向上法の検討と、薄膜作製方法の改善によるME効果の確認、ならびにFe_2O_3薄膜の作製方法の確立及び異種元素添加による結晶磁気異方性向上法の検討を行った。 先ず、酸化物製膜用に導入したDC-RFマグネトロンスパッタ装置を用いてCr_2O_3薄膜ならびにFe_2O_3薄膜の作製条件の最適化を行った。製膜方法を全面的に見直し適切な製膜パラメータを選択することで、高い交換バイアス磁界と、電界印加時に良好な絶縁特性を示すCr_2O_3薄膜の作製に成功した。また電極上に作製したCr_2O_3薄膜に対し、これまでバルクでしか得られていなかった交換バイアス磁界の電界による反転をCr_2O_3薄膜においても観測した。Fe_2O_3薄膜に関してもCr_2O_3と同様の製膜方法を適用し、バルクでの報告例と同様の結晶配向性を示すことを確認した。 一方でCr_2O_3Fe_2O_3ともに磁気異方性が小さいため、薄膜においてブロッキング温度が低下してしまう問題があった。そこでの向上に向けた取り組みとして、Fe_2O_3/Cr_2O_3ヘテロ構造における格子歪効果を利用しCr_2O_3薄膜の結晶磁気異方性を向上させることで、膜厚20nmにおいてもT_Bを260Kと室温近くまで引き上げることに成功した。また、Fe_2O_3薄膜に関しては異種元素添加による結晶磁気異方性の向上を試み、室温領域には届いていないものの低温において交換バイアスを観測したことから、本方法において結晶磁気異方性の向上が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先ず、これまで観測に成功していなかった均一な単結晶薄膜における電気磁気(ME)効果の発現を本年度中に実現出来たという点で、大きな進展があったと言える。温度特性の向上に関しては、ブロッキング温度を室温近くまで引き上げることには成功しており、目標とする350K程度までさらに引き上げることが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究で作成可能になったME交換を示すCr_2O_3薄膜を利用して、動作温度(ブロッキング温度 : T_B)を磁気記録応用の面で現実的な350K程度まで引き上げることが主な課題となる。そのためには、酸化物薄膜の結晶磁気異方性を増大させることが必要不可欠であるため、4d, 5d遷移金属元素添加したCr_2O_3, Fe_2O_3薄膜の作製を行い、最適化された製膜方法と組成を明らかにする必要がある。同時に、Fe_2O_3/Cr_2O_3ヘテロ構造の膜厚や界面構造の最適な設計を明らかにすることで、目標の達成に向けた取り組みとする。
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Research Products
(2 results)