2013 Fiscal Year Annual Research Report
発展途上国における個人及び家計の意思決定についての計量経済分析
Project/Area Number |
13J06393
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嶋本 大地 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リスク態度 / 農業経済学 / カンボジア |
Research Abstract |
本研究では、リスクに対する態度やせっかちさなどの個人の性格が、家計内の意思決定にどの程度影響を与えるのかを分析することを目的とする。今年度は、昨年度カンボジアで実施した農村家計調査を用いて、技術採用に農家のリスクに対する態度がどの程度影響を与えるのか、実証分析を行った。分析は、農家のリスク態度を計測するために仮想的なくじに対する選好に関する質問を含めた農村家計調査に基づいている。農家の効用関数にプロスペクト理論の効用関数を適応させ、農家のリスク態度が2種類の技術採用に注目する。1つ目は、国際稲研究所が援助の一環で提供した収穫後の管理方法を改善する技術の一つである水分計を、種の水分量を計測のために使用したかに注目する。2つ目は、1990年代にカンボジアに導入された米の品種か伝統的な品種を採用するかに注目する。分析の結果によると、低い確率を過大評価する農家やリスク回避的な農家ほど水分計を採用して種の水分量を計測する確率が高いことが明らかになった。ただし、農家の損失回避度は水分計の採用には有意に影響しなかった。また、品種選択に関しては、農家のリスク態度は有意に影響しなかった。これらの結果は、農家が技術採用する際に直面しているリスクや不確実性の種類が、技術採用に与えるリスク態度の効果を部分的に決定していることを示唆している。 この研究は、リスク態度によって提供された援助品をすぐに使用しない人がいるため、正確に政策の評価をするのであれば、従来実施されていた短期的な政策評価ではなく長期的な視点から政策評価をする必要があることを示唆している。 また、同じ農村家計調査を用いて、携帯電話で情報の価格の情報を獲得することが、農家の米の売値に与える影響に関して実証分析を行った。分析結果は、携帯電話で市場の価格を獲得するが、農家の買い手との交渉力を改善し、米を高い売値で売っていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンボジアの農村家計調査を用いた実証分析が順調に進み、論文としてまとまりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今度の研究に関して、他の地域や国を対象に同様の農村家計調査を実施し、異なる技術や教育投資などを想定したときに分析結果がどのようにかわるのか検討したい。
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