2013 Fiscal Year Annual Research Report
河川流出・水温モデルを用いた将来の広域遺伝的多様性推定手法の開発
Project/Area Number |
13J06493
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
糠澤 桂 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分布型流出モデル / 底生動物 / 気候変動 / 遺伝的変動 / 環境選択 / 生息場適性指数 |
Research Abstract |
本研究課題では, 気候変動に伴う将来の遺伝的多様性を予測することを目標とする. 本年度においては水生昆虫4種の遺伝データと水文モデルから計算した水理データ等との連関を調べ, 遺伝的多様性推定モデルを構築した. 本年度の研究成果および発表状況を以下に示す. 20項目の環境データを説明変数, 環境選択性遺伝マーカーにおける遺伝子頻度を目的変数としたステップワイズ重回帰分析の結果, 年最高水温と集水面積が対象水生昆虫の遺伝子に影響していることが分かった. これは, 対象種が高水温, 集水面積に適応行動を有している事実を示唆する. また, 有意な重回帰モデルから遺伝子頻度を推定し, 遺伝的多様性および遺伝的に近縁な集団をマップ化する枠組みを構築した. この枠組みと全球気候モデル(GCM)を利用して, 次年度以降に将来の遺伝的多様性を予測出来る. 本成果は, 国際誌(Journal of Biogeography)からの査読意見を元に修正中である. 水生昆虫の遺伝的多様性と種多様性の正の有意な相関関係から, 流域内の遺伝的多様性空間分布を推定した. 種多様性は複数の水生生物(淡水魚, 水生昆虫など)の生息場適性指数(HSI)から推定されている. 結果として, ウルマーシマトビケラの遺伝的多様性は種多様性と強い正の相関を示した. この相関を利用して, 遺伝的多様性の空間分布を推定した. 予測された遺伝的多様性は中流域と支流において遺伝的多様性が高いパターンを示した. 本成果は国際誌(Ecological Modelling)にて査読中である. 遺伝的多様性に寄与する生息場条件を評価するために, 名取川流域における水生昆虫の遺伝的多様性と生息場適性指数(HSI)の関係性を評価した. 結果として, シロズシマトビケラの遺伝的多様性とHSIにおいて, 強い正の相関が確認された. これは, 生息ポテンシャルの高い良好な生息場が遺伝的多様性を高める働きを有する事実を示唆する. 本成果は, 土木学会論文集B1(水工学)に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では, 平成25年度中においてデータ整備の完了および分析までを想定していたが, 現在, 遺伝データと環境データの関係性分析および遺伝的多様性推定モデルの枠組みが完成しつつある. また, この内容を複数の国際誌への投稿を実現出来ている. このため, 当初の計画以上の進展があると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
8種類の全球気候モデル(MRI-CGCM3, MIROC5等)の将来出力値である気温や降水量を分布型流出・水温モデルの入力値とすることで, 将来の水文学的状況を予測する. これを本年度に開発した遺伝的多様性推定モデルの説明変数とすることで, 将来の遺伝的変化を予測する予定である.
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Research Products
(17 results)