2013 Fiscal Year Annual Research Report
8-11世紀イングランド統一過程再考とブリテン諸島史、ヨーロッパ中世史への再定位
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13J06606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内川 勇太 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アングロ・サクソン / ブリテン諸島 / イングランド統一 / マーシア / 王権 |
Research Abstract |
本年度は学会・研究会での報告を中心に研究を行った。国内では3回、海外では1回の報告があった。またイギリスでは国内で入手することができない文献を収集するとともに、現地の研究者と交流し、短期留学に向けての足掛かりを得た。 王権の伸長過程に関しては西洋中世学会の報告で特に8世紀のべーダにまでさかのぼって、ブリテン島におけるoverkingship (Overlordship)概念の変遷、実態について考察し、最終的にイングランド統一に至る歴史的展開の概念的背景を探った。その研究の過程で当初の8世紀からさかのぼり、6世紀以降のアングロ・サクソン諸王国の成立期に関する認識が不足しており、また今後の研究において不可欠であることを痛感し、研究時期を6世紀まで拡大して知識の増大に努めた。その成果の一部は来年度に口頭報告の形で公表する。 貴族研究、教会研究については両者が王権と分かちがたく結びつき、さらに両者相互にも密接な関係が存在することを踏まえ、特に王家・貴族層と教会・修道院の土地授受関係等に着目しつつ、それによって形成されてゆく諸地域の連続性、独立性について、それら諸地域がイングランド統一の過程にどのように組み込まれてゆくのかという視点から研究を進めた。 また本年度は研究を行う上で基礎となる辞書・参考図書類、一次史料を相当程度収集することができ、研究環境が格段に向上した。イングランド以外の諸地域に関する文献も徐々に収集しており、ブリテン諸島の歴史的展開の総合的把握という目的に向けて、着実に勉強を進めている。 最後に海外での報告について言えば、当初は第2年次に予定していたが、一年早く実現することができ、今後の国際的な研究活動にむけて非常に有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イングランド王権の伸長過程については、ベーダ、アングロ・サクソン年代記、証書等からブリテン諸島における王権概念、上級支配権概念の実態、変遷について整理・把握することができた。また地方行政区、貨幣、証書の証言状況等からウェセックス王権のマーシア地域への拡大が11世紀初頭に至るまで相当限定的であったことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
イングランド王権の伸長過程については、アングロ・サクソン諸国が成立してゆく6世紀まで遡って考察することが不可欠であるとの認識を得たため、当初より考察時期を広げて研究を継続する。またブリテン諸島全体を最初から論じようとすると漠然とした議論になる恐れがあるため、マーシア地域、特にウースター司教区/フイッチェ王国地域を中心としてその長期的変遷をたどることで、イングランド統一の過程の再考を図る。さらに貴族・教会研究については土地授受関係に着目した研究を継続して行う。
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Research Products
(4 results)