2013 Fiscal Year Annual Research Report
衛星リモートセンシングによるハビタットマッピングを用いたサンゴ礁の新しい生態研究
Project/Area Number |
13J06727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤山 周平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リモートセンシング / サンゴ礁 / 魚類 / 生態 / 生物多様性 |
Research Abstract |
WorldView-2マルチスペトルセンサにより 2012年9月に撮影された衛星画像を解析し、インドネシアのスペルモンデ諸島の2つの島の周囲のサンゴ礁の底質マッピングを行った結果、高いマッピング精度(全体の精度で81%)で感覚的にも再現性の高い底質マップが得られた。 サンゴ礁のエッジ効果(ハビタットの縁辺部における生物の密度や多様性などが中心部と異なること)に着目し、作成した底質マップの礁斜面部分を種々の空間処理により3セクション(サンゴ礁縁辺域 : BC、サンゴ礁中心域 : CC、貧サンゴ域 : FC)に分割した。6月にスペルモンデ諸島で各セクションの複数調査区において魚類9種の個体数密度のデータを取得した。各セクションにおける平均密度を比較した結果、絶対的なサンゴのポリプ食者であるChaetotdon octofasciatusの密度がBCで有意に高かった(P<0.05)。この要因の一つとして、同対象種が主に餌として利用する枝状サンゴが縁辺部に多いことが考えられる。また各セクションの総面積とその平均個体数密度から同魚種の調査地全体の現存量を推定することができ、衛星画像由来の底質の二次元空間分布情報を活用することで簡便な現存量推定が行えることが示された。また魚類群集の種多様性に及ぼすエッジ効果を検討するため、上記調査で区画内に出現した魚種を記録した。三者の平均出現種数および分類学的距離を考慮した多様度指数はともにBCで最大となった。さらに各魚種の出現・非出現データからChao-2指数を用いたrarefaction curveを作成したところBCで最もガンマ多様性が高いことが示され、CCとFCには差が見られなかった。これらより、サンゴの豊富なサンゴ礁の縁辺部においてはその中心部よりも魚類の種多様性が高いことが示された。また出現・非出現データを用いた指標種分析によりApogon compressusなどテンジクダイ科の複数魚種がBCの指標種として検出された。これらの小型の魚種は他の魚食性魚類の餌として非常に重要とされ、サンゴ礁の縁辺部における高い種多様性を支えていると考えられる。このようにサンゴ礁の魚類の現存量や多様性は底質の空間分布に影響を受けていることが分かり、底質の空間分布情報を取得する手法としてリモートセンシングの有用性が示された。 2014年6月に行う予定のデータ拡充のためのスペルモンデ諸島における調査に先立ち、新たな調査範囲を含む最新のWorldView-2画像(2013年9月撮影)を用いて底質マッピングを行った。その結果、前年の画像と同程度の高精度な底質マップが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WorldView-2衛星のスペルモンデ諸島の画像解析は当初の予定よりも順調に進み、2012年の画像に加えて2013年の画像による底質マッピングもほぼ終了した。また魚類の現存量及び多様性に関する解析はおおむね順調に進めることができた。一方で当初予定していた沖縄地方における現地調査や衛星画像解析は時間の制約で行うことができなかった。これらの状況を総合し、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度6月にスペルモンデ諸島において魚類の現存量及び多様性に関するデータの拡充のための追加調査を実施し、2013年の画像の底質マップを利用して解析を行う。その際には本年度構築した手法に加え、空間的自己相関などの指標を用いた新たな空間解析手法を応用し、サンゴ礁の魚類生態研究における更なる空間解析の有用性を検討することとする。 なお海草やベントスに関する解析は2012年度に前倒しで行い一定の成果が得られたが、魚類の結果と併せて一貫性を持たせることが困難と判断した。また当初予定していた沖縄地方を対象とした研究は本年度行えず、次年度に繰り越しての実施は難しいと考えられた。従って博士課程中は当初の計画を一部変更してスペルモンデ諸島における魚類の現存量および多様性と底質の空間分布に関する成果を学位論文にまとめることとする。
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