2014 Fiscal Year Annual Research Report
大江健三郎の著作活動における日本思想史的意義-「戦後民主主義」論の観点から-
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13J06845
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北山 敏秀 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大江健三郎 / 橋川文三 / 戦争体験論 / 戦中派 / 世代論 / セヴンティーン / 浅沼事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の具体的な研究活動としては、7月に、所属する専攻の研究会で開催されたワークショップに参加し、口頭発表を行なった(言語態ワークショップ『〈戦後〉特集―主体と責任―』、2014年7月14日、東京大学・駒場)。 また、それをもとに執筆した論文を2015年3月に発表した(「「戦争体験論」の意味―『われらの時代』を「批判」するということ―」、『言語態』2015年3月)。この論文では、1950年代後半の日本で、「戦争体験」を語ることがいかに重要な思想的課題としてあったかについて論じた。そのために、思想家の橋川文三が大江健三郎の小説『われらの時代』をいかに「批判」したかという問題を取り上げた。本論文は、橋川と大江の言説を比較することで、敗戦後の日本における思想状況の一端を明らかにすることを試みたものである。当時橋川は、「あの戦争」を現在にまで「継続」するものとして認識することの必要性を訴えており、その主張に基づいて『われらの時代』を批判していた。しかし本論文では、『われらの時代』を「批判」するということ自体を、橋川における「戦争体験論」を構築するための行為として捉え直した。 さらに、平成25年度に学会誌に投稿していた論文の採用が決定し、当該雑誌の2014年9月号に掲載された(「大江健三郎の「自殺」する肉体―「セヴンティーン」「政治少年死す」という投企―」、『日本文学』2014年9月)。この論文では、大江健三郎の小説『セヴンティーン』について分析した。小説発表と同時期の大江健三郎の言説、および同時代の社会状況との関連から、これまでも重要視されてきた『セヴンティーン』について再考を施した。1960年に発生した右翼テロリズムが、小説内容にどのように影響を与えているかについて分析したものである。 2014年度は以上の計2本の論文を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って複数の論文を執筆し、発表した。また、博士論文の執筆に向けた所属専攻内での第1次審査に合格した。それらの過程において、研究課題に対する理解度や今後の研究に対する目算は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題に関わって組織・参加している研究会を今後も継続し、他の研究者との交流を深めながら視野を拡大し、研究をさらに推進する。また、平成26年度の研究成果によって、博士論文の執筆計画がより具体的なものになってきているので、博士論文としてまとめることを視野に入れながら、研究対象の選定をより具体的に絞っていき、論文の執筆を進める。
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Research Products
(3 results)