2013 Fiscal Year Annual Research Report
人工自己複製モデルを用いたアンチウイルスRNAの作用条件の探索
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13J06976
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
番所 洋輔 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宿主 / 寄生体 / 振動 / 実験室内進化 / RNA製剤 |
Research Abstract |
抗ウイルス性RNA製剤の基盤技術となりうるAnti-viral RNA (A-vRNA)とウイルス由来RNA (vRNA)が、細胞集団におけるウイルスの増殖・感染と薬剤の作用を模擬した微小水滴内で示すダイナミクスを明らかにした。実験およびシミュレーションの結果から、vRNAとA-vRNAの濃度は生態系における捕食被食者モデルのような振動を示すことが分かった。また、A-vRNAとvRNAの初期濃度に関わらず、同様の振動現象が観察された。振動現象が発現した理由は、vRNAがいったんはA-vRNAによる阻害によって細胞集団内で濃度を低下させるものの、ごく一部がA-vRNAが存在しない細胞内で再び増幅するからであった。さらに、vRNAの配列と増幅活性の変化を調べたところ、徐々にA-vRNA存在下でも阻害を受けずに増幅できるように進化していることが分かった。以上より、vRNAはA-vRNA存在下においても濃度を振動させながら存続し、A-vRNA耐性を進化によって獲得することが明らかとなった。以上の内容は、一部について2013年7月にイギリス・ロンドンで行われた国際会議SB6.0、10月に京都で行われた第51回生物物理学会で発表を行った。また、以上の内容の学術論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以上の結果は、細胞様の微小区画集団においてA-vRNAが抗ウイルスRNA製剤として十分な機能を有していないことを示している。解決策としては、vRNAが再増幅を示す際に改めてA-vRNAを投与すること、A-vRNAが分解または排出されにくい機能を付与する等が考えられる。ただし、本実験系を宿主(vRNA)と寄生体(A-vRNA)の相互作用モデルと解釈すれば、宿主と寄生体を含む系の進化の性質について重要な示唆を多分に含む成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
vRNAとA-vRNAの感染と抑制のモデルを一般的な宿主と寄生体の系として捉えることにより、宿主と寄生体か生み出す振動現象および進化の方向性について明らかにする。具体的には、振動現象の発生条件や振動と配列空間内でのvRNA集団の動きについて明らかにする。以上で得られた成果をもとに、宿主と寄生体の共存と進化、さらにA-vRNAの薬剤としての利用可能性について議論する。
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