Research Abstract |
本研究の目的は, 大学生の「主体的な学習」を量的側面としての学習時間, 質的側面としての主体的な学習態度に分離した上で後者に着目し, その測定尺度の開発及び心理的要因との実証的な検討を通して, (1)量・質の両側面から大学生の「主体的な学習」を測定及び評価するための枠組みを構築すること, (2)心理的要因に沿った主体的な学習態度をサポートする方策を検討することであった。 研究1では主体的な学習態度を測定及び評価するための尺度を開発し, 信頼性及び妥当性の検討を行った。研究2,3では, 主体的な学習態度とアイデンティティと内発的動機づけの関係, 研究4,5,6では主体的な学習態度と内発的動機づけ, 自己調整学習方略との関係を実証的に検討した。これらの研究結果から得られた知見は, 主体的な学習態度の形成を促す心理的要因として, アイデンティティ, 内発的動機づけ, 自己調整学習方略の4つの変数が見出された。アイデンティティ, 内発的動機づけは大学1年生から3年生まで, 自己調整学習方略は1年生において主体的な学習態度の形成を促すことが明らかになった。 実証的研究を通して得られた知見から考えられる本論文の示唆は, 大学生の主体的な学習を捉える上で, 量・質の両側面から捉えることの重要性を示したこと, 心理的変数に則したサポートの方策を提示したことである。特に後者に関しては, アイデンティティはキャリア教育で, 内発的動機づけは専門科目め授業によって, さらにSRLSは初年次教育においてサポートすることが特に有効である可能性が示唆された。今後の課題としては, (1)因果関係に踏み込んだ検討を行うため, 長期にわたる縦断調査が必要であること, (2)主体的な学習態度の予測的妥当性を検討する必要があること, (3)行動観察や学業成績など, 主体的な学習態度尺度と直接評価の指標との関係を検討する必要があることの3点が見出された。
|