2013 Fiscal Year Annual Research Report
アサリに寄生するPerkinsus属原虫2種の病原性と宿主特異性のメカニズム
Project/Area Number |
13J07028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 剛佑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DCl)
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Keywords | アサリ / Perkinsus属原虫 / 病害性 / 宿主特異性 |
Research Abstract |
アサリに対する攻撃試験により、Perkinsus olseniとP. honshuensisとの病害性を比較した。攻撃は、培養栄養体の成貝閉殻筋への注射と、遊走子懸濁液への稚貝の浸漬によって行った。これまでの研究により、国内のアサリに寄生しているのはほとんどがP. olseniであり、P. honshuensisの検出は稀であることが明らかとなっていた。そのため、この2種の間には増殖能力や病害性等に大きな差があると予想されたが、結果はそれに反し、両種ともアサリ、特に稚貝体内で速やかに増殖し、寄生強度が高くなるとアサリは高い死亡率を示した。これにより、P. olseniとP. honshuensisの分布の違いは、単純な増殖能力等の差によるものではないことを明らかにすることができた。 また、優占種であるP. olseniを用いて、アサリおよびホンビノスガイに対する攻撃試験を行った。攻撃は、上と同様、培養栄養体の成貝閉殻筋への注射と、遊走子懸濁液への稚貝の浸漬によって行った。アサリ稚貝ではこれまでの研究同様、速やかに増殖が進んだのに対し、ホンビノスガイ稚貝では、寄生は成立したものの、その後の寄生強度に明確な増加傾向が見られなかった。また、栄養体を注射したホンビノスガイ成貝では、攻撃後の飼育期間中に寄生強度の減少が確認された。国内のPerkinsus属原虫について、アサリ以外の貝で攻撃試験を行い寄生強度の推移を調べた例は少なく、今回の結果は本属原虫、特にP. olseniの宿主特異性のメカニズムを明らかにするうえで重要な成果と考えられる。 さらに、アサリとホンビノスガイとでP. olseniに対する感受性が異なった原因を探るため、両種の血リンパ液性成分中におけるP. olseni栄養体の培養試験を行った。しかしこの実験では、栄養体の増殖に関して両種の間に有意差は見られなかった。このことから、両種のP. olseniに対する感受性の違いは、血リンパ液性成分の単純な違いによるものではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2通りの攻撃試験により、Perkinsus olseniの寄生強度の推移をアサリとホンビノスガイの間で比較した結果、アサリではP. olseniの増殖が進行しやすく、ホンビノスガイでは進行しにくいことを明らかにすることができた。当初の計画では、攻撃試験によるPerkinsus属原虫の感染・増殖の比較までが1年目の予定であったが、これに加えて、血リンパ液性成分中での培養試験等、P. olseniへの感受性が2種の貝で異なる理由を調べる段階に進むことができ、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの結果から、アサリとホンビノスガイとでPerkinsus olseniに対する感愛性に違いが見られ、その原因は血リンパ液性成分の違いによるものではないことが示唆きれた。したがって今後は、血リンパの細胞性成分の機能を比較し、これが貝体内におけるP. olseniの寄生強度の推移の違いに影響しているか、また影響しているとしたらそれは血球の機能のどこに由来するのか、明らかにすることを目的とし、研究を推進する予定である。
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Research Products
(1 results)