2013 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ合衆国における連邦統合論の編成--ラディカリズムと政治的妥協
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13J07367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 寛文 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アメリカ合衆国 / デモクラシー / 共和主義 / 政治思想史 / 大西洋世界 / 奴隷制 / アンティベラム / 党派性 |
Research Abstract |
本研究の中心的課題は、アメリカ合衆国における民主主義的統治原理の確立過程に着目することを通して、19世紀前半の連邦統合論の諸相を政治史および政治思想史的観点から明らかにすることにある。特に初期共和国政治における「党派性」(partisanship)の観念を重視しつつ、第二次米英戦争(1812-15)以降に見られた政党政治および政治社会の変容過程を解き明かすことを課題としている。 平成25年度は、報告者が修士課程より継続して研究対象としている無効宣言論争(1828-33)に関する史料的裏付けを強化するとともに、それに先立つ1810年代から1820年代に至る時代の知見を幅広く吸収した。具体的には、まず連邦議会議事録や政治指導者の史料集などの刊行史料を1830年代を中心に精査した。また、夏季長期休暇を利用して、アメリカ合衆国への海外出張を実施し、連邦議会図書館、ヴァージニア州歴史協会、サウスカロライナ州歴史協会にて手稿史料等を収集した。文献調査を通して、建国初期に見られた「暴民政治」や「反動政治」への強い危惧が通説よりもかなり遅い時期まで観念されていた可能性を探り出すことができた。この点は、安定的な「アメリカ民主主義」史像とは異なる解釈に繋がる可能性を有しており、同時代のグローバルな史的連関を考える上でも有意な示唆を与えるものと思われる。 研究発表としては、平成25年4月20日の日本アメリカ史学会「修士論文報告会」において、無効宣言論争における従来では等閑視されてきた連邦政治家の動きに関する報告を行い、討論者およびフロアより建設的な評価を得た。また、平成25年6月に来日したジョン・L・ブルック教授(オハイオ州立大学)と、本研究分野における最新の研究動向をめぐって活発な意見交換を果たした。本年度に収集した史料および文献にもとづき、日本アメリカ学会年次大会(平成26年6月)にて研究報告することがすでに決定している他、成果をまとめた論文を投稿に向けて執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二次文献の整理が進み、米国における最新の研究動向を把握したことに加え、連邦議会議事録等の一次史料の精査が独自の発見に結びついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
19世紀前半のアメリカ合衆国の連邦統合論を理解するにあたり、第二次米英戦争(1812-15)がその後の国内政治に及ぼした影響が極めて大きいことが文献調査を通して明らかとなってきた。それゆえ、今後は研究対象とする時代をやや前にずらして、1810年代から1820年代の連邦政治史を重点的に研究する予定である。さらに、扱う史料も連邦議会議事録のみならず、各地の新聞や機関誌などから当時の思潮や時代感覚を読み解くことが肝要となるだろう。
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Research Products
(2 results)