2013 Fiscal Year Annual Research Report
複数のアントラセン環を有する芳香環ナノチューブの構築と機能開発
Project/Area Number |
13J07484
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩原 啓太 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | アントラセン / 分子ナノチューブ / ホスト-ゲストト化学 / クマリン / 蛍光性 / 水溶性 |
Research Abstract |
本研究では、4つのアントラセン環で囲まれたナノ空間を有する分子ナノチューブの構築を行い、ホスト-ゲスト間の疎水性相互作用やπ-π相互作用を駆動力とした様々な有機分子の選択的内包と、それに伴う発光性制御を目指した。これまで、我々は発光性のアントラセン環を構成要素とした芳香環のみから成る分子ナノチューブを段階的なカップリング反応と官能基変換によって合成した。また、そのX線結晶構造解析により約1nmの内部空間を有することを明らかにした(K. Hagiwara, M. Yoshizawa, et al., Chem. Commun. 2012, 48, 7678-7680)。本年度は、分子ナノチューブ外面への水溶性官能基導入により、水中での疎水性相互作用を利用した選択的な分子内包と特異な分光学的性質の観測に成功したので報告する。 まず、分子チューブの合成ルートを改善して8段階の短縮により総収率の向上に成功した。また、分子ナノチューブの外面に水溶性官能基であるスルホネート基を導入により水に易溶な分子ナノチューブの合成を達成した。この分子構造はNMRおよびESI-TOF MSで明らかにした。 この水溶性分子ナノチューブは、水に難溶な棒状の飽和炭化水素やビフェニル誘導体を内包できることを明らかにした。また、平面状の色素分子であるクマリン誘導体では、嵩高い官能基を有する場合、チューブ内に1分子取込まれ、可視光によって励起されたアントラセン環からクマリンへのエネルギー移動(FRET)が観測された。一方、立体障害の少ない構造の場合ではチューブ内に2分子取込まれ、クマリン同士のエキシマー発光が観測された。これらの内包体の構造はUV-visスペクトルを利用した滴定実験とESI-TOF MSによって明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、水溶性チューブの構築とクマリン誘導体の内包が挙げられる。チューブ外面に水溶性官能基を導入し、水中で種々のゲスト分子の内包とそれに伴う特異な発光性の変化を明らかにした。この成果は学会発表を行い、論文も準備中である。また、開口部を官能基導入した新規チューブの合成に成功し、機能化に向けて研究中であり、進度はおおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、さらなるゲスト分子のスクリーニングを行うことで内包挙動や分光学的性質の解明を目指す。また、内包による不安定化合物の安定化(栄養素のビタミンAや、ラジカル開始剤のAIBNなど)や発光挙動と内包率の相関を調査する。他に、高分子を内包させることにより擬ロタキサンを形成させ、新たな物性(発光、水溶性など)を付加させることを目指す。また、内包されたゲスト分子の外部環境(温度、pH、紫外可視光など)変化による選択的放出を目指す。 さらに、3つまたは6つのアントラセン環を有する新奇分子ナノチューブを構築して、4つのアントラセン環を有する分子ナノチューブとは内包の立体選択性の異なるホスト分子を開発する。
|
Research Products
(6 results)