2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハゼ亜目魚類における側線系とその神経支配-原始的な状態の特定と環境への適応進化-
Project/Area Number |
13J07617
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
朝岡 隆 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ハゼ亜目 / ツバサハゼ科 / 側線系 / 機械刺激受容器 / 解剖学 / 進化 |
Research Abstract |
本研究は, 側線系とその神経支配を観察することで, 多様なパターンを呈するハゼ亜目魚類の表在感丘列(体表に分布する側線系の機械刺激受容器)の進化的な起源を明らかにすることを目的の一つとしている. 本亜目では, 他の真骨魚類では良く発達する側線管が退化的で, もっとも原始的なハゼ類とされるツバサハゼ科魚類を除き, 減少あるいは完全に消失している. そこで本年度はツバサハゼ科ツバサハゼRhyacichthys asproの側線系と側線神経系について詳細な観察をおこなった, その結果, ハゼ類の側線系の起源に関するいくつかの興味深い知見(以下)が得られた. 1. ツバサハゼではハゼ類がもっとも多様な感丘列の分布パターンを示す眼窩下方に, 多くのハゼ類で普遍的にみられるいくつかの感丘列を欠く, これらの感丘列は, 通常頬神経枝が支配するが, ツバサハゼでは同神経枝は眼下管の内部にある管器感丘を支配していた. 眼下管と感丘列の位置関係から上記の表在感丘は, 眼下管の消失に伴い管器感丘が表在感丘に置き換わったものと以前から推測されていたが, 今回の観察結果により両者の相同性が初めて確認された. 2. 真骨魚類において, 1枚の側線鱗には1個の管器感丘のみが含まれる, しかし, ツバサハゼでは複数個の, 最大で7個もの管器感丘が存在していた. 3. ツバサハゼの躯管は, 側線鱗上の溝とそれを覆う表皮により構成されていた. 躯管は, 側線鱗の溝の形成による表在感丘の埋没, 表皮による溝の被覆, そして被覆箇所の硬骨化により完成することが, カワスズメ科において確認されている. したがって, ツバサハゼの躯管と他のハゼ類の躯管を欠く状態は, それぞれ躯管の個体発生の第二段階と初期段階と等しい. 以上から, ハゼ亜目魚類において側線系は幼形進化的な特徴を示す可能性が高い.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 遠征での調査期間に天候に恵まれなかった影響もあり, 観察種数の増加についてはあまり芳しくは無かった. しかし, ツバサハゼにおける観察を終了し, その成果は既に論文として出版済みである点などから, おおむね予定通りに進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
解剖用の試料については粗方の収集を終えているため, 順次神経の観察をおこなっていく. また, 新たな視点から議論を深めるべく, ハゼ類における側線系の発育に関する知見を蓄積していく予定である. 得られた成果は, 順次, 論文として発表していく予定である.
|
Research Products
(5 results)