2013 Fiscal Year Annual Research Report
外国人のシティズンシップ-グローバル化時代における国民国家の再定位に向けて
Project/Area Number |
13J07837
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮井 健志 北海道大学, 大学院法学研究科, 待別研究員(DC1)
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Keywords | シティズンシップ / 国際人口移動 / グローバル化 / 外国人 / 移民政策 / 入国管理 / 市民統合 / 多文化主義 |
Research Abstract |
国境を越える人の移動は、国民国家体制とグローバル化が相克する狭間で加速しており、その結果、国民のみをその構成基盤とみなす旧来的な国民国家観は変容を迫られている。本研究は、「シティズンシップ」を鍵概念とし、現状・歴史・規範理論の三方向から包括的にアプローチし、国際人口移動に関する規範的な理論構築を行うものである。研究初年である本年度は、本研究で使用する資料・文献の収集を含めた基礎的研究に従事しつつ、研究内容を着実にアウトプットすることを意識して進めた。研究の内容面では、まず規範理論について国際人口移動をめぐる論争の状況や問題の所在の洗い直しを行った。特に力を入れたのは一方的な入国管理の規範的性質、デモクラシーの境界線問題、非支配の自由と移民の関係、多文化主義の四点であり、これについては目標をおよそ達成できた。現状と歴史については、各国の移民政策に関して政府公刊資料や二次資料を収集し分析を進めるとともに、仏・旧移民省(ONI)および労働許可制度の成立過程に関する資料調査、欧州連合における共通移民政策の成立過程に関する資料調査など一次資料の収集にも尽力した。さらに、東京入国管理局視察など国内の移民受け入れをめぐる実地調査も積極的に行い、また各種学会やシンポジウムにも精力的に参加するなど、知見を拡張するべく努めた。これに関しても目標はおよそ達成できたと言えよう。研究のアウトプットとしては、国際人口移動とシティズンシップに関する基幹的研究の一つであるChristian Joppke, Citizenship and Imrnigration (Polity, 2010)を翻訳作業に参加し共訳書を出版したこと、そして日本国際政治学会2013年度年次大会にて本年度に行った研究の一部を報告したことが主な成果として挙げられる。次年度以降は、これまで通り基礎的研究を着実に積み重ねつつ、よりアウトプットを重視して研究を進めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で必要となる文献の収集や整理は予定通り進んでおり、規範理論については議論の整理や理論の検討もおよそ計画通りである。現状と歴史に関しては万全とは言えないが、本年度に収集・分析した一次資料や未交換資料は、次年度以降の研究遂行上の見通しを立てるには十分なものであった。したがって、現状・歴史・規範理論の三方向から包括的にアプローチするための下準備を整えるという初年度の目標はおよそ達成できたといえ、おおむね計画通りの進捗状況だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の計画に従い、歴史と規範理論を中心とした研究を行いつつ、さらに現状を組み込んだ理論化へと順次着手していく予定である。とりわけ欧州での資料調査を積極的に遂行すると同時に、国際的な共同研究を見据えて、国内外の学会での報告や学術雑誌への投稿などわアウトプットも順次行っていきたい。次年度の研究が順調に進んだならば、最終年度の研究遂行に関して大きな変更は予定されない。
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Research Products
(2 results)