2013 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術の体制化プロセスに関する研究-シモンドン、フーコー、三木を手がかりとして
Project/Area Number |
13J07843
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大家 慎也 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 統治 / 世代 / 科学技術 / 技術哲学 / アスベスト問題 / 科学技術リテラシー / 市民参加 / 西田幾多郎 |
Research Abstract |
平成25年度の研究は、実施計画の予定通り、1「『世代形成』と『統治』の観点からの包括的かつ複合的なアプローチへの拡張」、および、2「近代日本の技術哲学における『世代形成』および『統治』の問題の研究」の二つのテーマのもと行われた。主要な研究業績として、次の三点が挙げられる。 まず1に関して、(1)学会発表「泉南アスベスト国賠訴訟に見るリスクと責任」(藤木篤氏との共同研究)では、泉南アスベスト国賠訴訟の経過をたどり、訴訟経過でしばしば等閑に付されてきた、当該アスベスト災害にあった事業者・労働者に適切なリスク管理が可能であったか否かという問題点の持つ重要性を指摘した。特に、シュレーダー=フレチェットの「ICのジレンマ」の観点から、事業者・労働者の自己責任論には限界があることを指摘した。また、(2)英語論文"On Civil Participation in Systematization of Scientific Technology"においては、科学技術の体制化における市民参加を論じる先行研究をとりまとめた上で、既存の枠組みの再考を促す事例として、泉南のアスベスト被害の例を提示した。その上で、本研究が、科学技術に関するリテラシーという既存の研究分野との領域横断的な発展的議論に開かれていることを指摘した。 2に関しては、(3)論文「グローバル社会における科学技術―フィーンバーグの西田論」では、西田幾多郎の技術哲学を「世界的世界=相互行為の場所」という理論枠組みで発展させたフィーンバーグの議論を取り上げ、批判的に検討した。これにより、グローバル化しつつある世界において、科学技術と文化の相互構成とその普遍化のメカニズムを論じる際の問題を、日常性の問題、および排除/包摂の問題という二点において指摘することができた。 これらの他に、複数の研究会やシンポジウムで発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究テーマの根本にある「統治」概念の検討について、科学・工学や社会学、政治学、哲学・倫理学の関連する分野から、期待以上の研究成果をとりまとめることができたからである。特に、上記した研究実績の(1)と(2)では、研究目的に関し、アスベストに関する最新の工学研究や社会運動論・市民参加論などの社会学、政治哲学の発展的な研究成果をもとに取り組むことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題の今後の推進方策は、当初の実施計画を「技術の媒介理論」の議論を経由して増補するかたちで計画される。P-P. Verbeekらを中心に近年提出されているこの議論は、科学技術によってもたらされる人工物が人間の知覚と行為のあり方に与える影響を考察することで、人工物との関わりのなかで人間の認識と倫理がどのように変化するかを論じる枠組みを提示している。この議論を発展させることで、人工物との関わりのなかで自己と他者の統治がいかになされるかを、より包括的に論ずることができると判断された。 具体的には、研究実績の(3)の理論的枠組みの議論を、技術の媒介理論の検討を通じて発展させるとともに、(1)、(2)を含む事例研究を質・量ともに充実させる。
|
Research Products
(8 results)