2013 Fiscal Year Annual Research Report
偶蹄類フェロモン分子群の同定と受容メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J07968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 健 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フェロモン / V1R / カルシウムイメージング / 偶蹄類 / HEK293細胞 |
Research Abstract |
動物界において、フェロモンは行動や生理の制御に重要な役割を担っている。昆虫類では多くのフェロモンが同定されているが、哺乳類ではバイオアッセイが困難なことから、フェロモン同定の成功例は少ない。そこで本研究では、生体を用いるのではなく、「フェロモン受容体候補分子のリガンド探索」というアプローチをとることとした。哺乳類のフェロモン受容体候補は、2タイプ(V1R, V2R)の7回膜貫通型受容体ファミリーから構成されると推測されており、V1R遺伝子はほとんどの哺乳類がもっている。本研究では特に、産業的に重要なウシ、ヤギ、ヒツジなどの偶蹄類のV1Rのリガンド分子群の同定を目的としている。 当該年度は、マウスのV1Rをモデルとし、V1RをHEK293細胞で機能発現させ、カルシウムイメージングを用いてリガンドをスクリーニングする検定系の確立を目的とした。まず、V1RをHEK293細胞に強制発現させた際に細胞膜へ移行するかを調べた。8種のマウスV1Rの膜移行を免疫染色法により確かめたところ、そのうちの1種は非常に効率的に膜移行することが認められた。このV1RとGα15をHEK293細胞で供発現させてカルシウムイメージングを行ったところ、リガンド候補成分のエストロゲン硫酸塩に対する明確なカルシウム応答が認められた。また、V1RとPLCβ2の共発現によっても、エストロゲン硫酸塩に対するカルシウム応答が認められた。前者は百日咳毒素に影響を受けず、後者はカルシウム応答が消失した。この結果と先行研究による知見により、後者はGi2を介してGβγによってPLCβ2を活性化するというシグナル伝達経路であると考えられ、鋤鼻神経におけるシグナリングを再現していると推定される。 また、ヤギのV1Rでは、8種中3種のV1RがHEK293細胞で効率的に膜移行することが認められたので、これらのV1RもHEK293細胞に発現させることによる機能解析が可能だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスのV1RをHEK293細胞で発現させ、効率的に細胞膜に移行した場合には、リガンドに応答してカルシウム応答を検出する系を確立することができた。従って、次年度以降にヤギ、ヒツジ、ウシなどのV1Rのカルシウムイメージングを行う基盤形成ができたことになり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤギゲノム情報をもとに、ヤギのV1Rを網羅的にクローニングし、HEK293細胞に発現させてカルシウムイメージングを行う。リガンドとしては、申請者がヤギの生殖中枢を刺激するフェロモン分子として同定した4-ethyloctana1や、その類縁化合物を用いて、ヤギV1Rのリガンド分子群を探索し、フェロモン候補成分を同定する。
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Research Products
(1 results)