2013 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌の細胞壁構築に関与する3種類の転写調節因子の同定
Project/Area Number |
13J08011
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
亀井 誠之 東洋大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アカパンカビ / 糸状菌 / 細胞壁 / cell wall integrity / シグナル伝達 / MAPキナーゼ / 転写調節因子 |
Research Abstract |
本研究はモデル糸状菌アカパンカビを研究材料として、糸状菌の細胞壁構築に関与する転写調節因子の同定を目的としている。本年度は研究実施計画に基づいてbeta-1,3-グルカン合成酵素遺伝子fks-1のプロモーター領域に結合するタンパク質のプルダウン、及びMAK-1 MAPキナーゼ結合タンパクのプルダウンによって転写因子の同定を試みた。現状としfks-1プロモーター結合タンパク群やMAK-1結合タンパク群の中に転写因子は含まれておらず、目的転写因子のプルダウン法による同定には至っていない。 そこで研究代表者は、アカパンカビの3種類のMAPキナーゼ(MAK-1, MAK-2, OS-2)のうち、MAK-1MAPキナーゼの遺伝子破壊株のみがグルカン合成阻害とキチン合成阻害による細胞壁ストレスに対して高い感受性を示すことに着目した。これはMAK-1下流や細胞壁合成に関与する転写因子であれば、その破壊株はmak-1破壊株と同程度の細胞壁ストレス感受性を示すのではないかと推定できたためである。そして、全174種類の転写因子破壊株群のスクリーニングからMAK-1下流には転写因子MSN-1が位置することを見出した。更に、出芽酵母と同様にアカパンカビでも転写因子RLM-1がMAK-1によって制御されていることを明らかにした。これらのことは、2種類の転写因子RLM-1とMSN-1がMAK-1の下流において細胞壁合成に関わる遺伝子の発現を正に制御する重要な転写因子であることを示唆している。RLM-1が細胞壁構築に関与することは酵母と同様であり、真菌類の細胞壁合成を制御するシグナル伝達における共通性を示すものである。その一方でMSN-1が細胞壁構築に関与することは真菌類では初めての発見である。MSN-1は、酵母では浸透圧応答を担うMAPキナーゼによって制御されているが、アカパンカビでは浸透圧応答を担うOS-2ではなくMAK-1による制御を受けており、酵母と異なる細胞壁構築制御機構の存在を示す重要な知見を得るに至っている。これらの成果は病原糸状菌の基礎研究にも貢献可能な情報を与えるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プルダウン法による目的の転写因子の同定には苦戦したが、遺伝子発現解析と遺伝子破壊株ライブラリーのスクリーニングからアカパンカビの細胞壁構築に関わる転写因子を2種類同定した。糸状菌ではほとんど報告例がなく、特に転写因子MSN-1は酸化ストレス応答に関わると考えられており、細胞壁構築と酸化ストレス応答との関連が示唆され、新たな展開も期待できる結果を得ている。これらのことから、おおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に同定した2種類の転写因子RLM-1とMSN-1に着目し、これらの転写因子の細胞壁構築への貢献度を検証するため、破壊株の細胞壁構成糖グルカンやキチンの定量や細胞壁損傷剤に対する感受性について精査する。また、これらの転写因子が制御遺伝子のプロモーター領域に結合しているのかを確認するため、プルダウン法を改善しつつ、ゲルシフト法によるアプローチも進める予定である。さらに細胞壁構築と酸化ストレス応答との関連が考えられたことから、酸化ストレス条件下における細胞壁関連遺伝子の発現変動についても検証していきたい。
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Research Products
(1 results)