2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J08125
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西山 めぐみ 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 視覚的記憶 / 変化の見落とし / 境界拡張 / 長期記憶 |
Research Abstract |
近年の研究により, われわれは膨大な視覚情報を長期に保持できることが報告されている。しかし, 視覚的長期記憶の具体的な性質や, 保持されている情報が潜在的にオンラインの視覚処理に及ぼす影響については明らかになっていない。本研究は, 視覚的記憶が関与する複数の課題を利用することにより, 視覚的長期記憶の性質を多面的に理解することを目的とした。変化検出課題を用いた研究では, 課題に関連する情報を事前に学習することによって, その後の変化検出課題の成績にどのような影響がみられるかについて検討した。その結果, 課題関連の情報が視覚的長期記憶として保持されていても, それらは必ずしも変化検出課題の成績を向上させるわけではなく, 保持されている情報の種類によって異なる影響がみられることが示された。これらの結果は, 顕在的に思い出せない過去の視覚経験は自動的にオンラインの視覚情報処理に寄与するが, それらの記憶は無意識のうちに視覚情報処理のエラーを導く可能性があることを示唆するものであり, 視覚的長期記憶とオンラインの視覚的情報処理の関係性を明らかにする上で非常に重要である。また, 視覚的記憶の動的処理プロセスについて明らかにするため, 境界拡張の実験パラダイムを利用し, 視覚的記憶の想起プロセスが個々の写真の記憶表象を変容させる可能性について検討を行った。境界拡張は, 写真を想起する際に実際に記銘した写真の境界よりも広い文脈を想起する現象である。われわれの研究により, 写真を想起することによって境界拡張の程度が変化することが示されたことから, 写真の記憶を想起するプロセスそのものが境界拡張を引き起こす一因となっている可能性が示された。これは, 特定の写真の想起時に, 過去の経験によって蓄積された視覚的長期記憶が寄与している可能性を示唆するものであり, 視覚的長期記憶の動的利用メカニズムの解明において重要な知見であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚的長期記憶がオンラインの視覚情報処理に及ぼす影響について複数の実験的検討を行い, 視覚的長期記憶の性質および動的処理メカニズムの解明について重要な知見を得た。これらの成果については現在, 国内外の学術雑誌に投稿準備中であり, 研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
変化検出課題および境界拡張現象を利用し, 引き続き, 視覚的長期記憶の性質について探索的に検討を行う。これらの実験によって得られた知見をもとに, 視覚的長期記憶がオンラインの視覚情報処理にどのように寄与しているかについて, その動的処理メカニズムに関するモデルの構築を目指す。視覚的長期記憶とオンラインの視覚情報処理の関係性を明らかにすることは, 既存の知覚研究と記憶研究の橋渡しとなる非常に重要な研究である。これらの実験によって得られた研究成果については, 国内外の学会で発表を行い, さらに, それらの成果をまとめ, 国内外の学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)