2013 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリオクロムによるc-di-GMPシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
13J08415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 元 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シアノバクテリオクロム / c-di-GMP / Thermosynechococcus / 細胞凝集 / 光受容体 |
Research Abstract |
1、シアノバクテリオクロム型光受容体の定性的生化学解析 Tlr1999の全長タンパク質はc-di-GMP分解活性を示し、その活性は青色光下に比べてシアン光下で上昇した。これによりTlr1999はc-di-GMP分解にはたらくシアン光センサーとしての機能が示唆された。TlrO911の全長タンパク質は発色団にフィコビオロビリンを用いて、411nmの青色光吸収型と522nmの緑色光吸収型とを可逆的に光変換した。また、TlrO911は青色光下で活性化されるc-di-GMP合成活性、緑色光下で活性化されるc-di-GMP分解活性を示した。これによりTlrO911は青色光下でc-di-GMP量を上昇させ、緑色光下でc-di-GMP量を減少させるデュアルセンサーとしての機能が示唆された。TlrO911は私たちの知る限り、光を感知する一つのドメインが、二つのシグナル伝達ドメインの活性を別々に制御する初の例である。 2、三つのシアノバクテリオクロムの単独破壊株を用いた表現型解析 野生株とtlrO924単独破壊株に加えて新たにtlr1999とtlrO911の単独破壊株をそれぞれ作製し、四種の波長の光(紫、青、緑、赤)を照射したときの細胞凝集を測定した。Thermosynechococcusは紫~青色光依存的に細胞凝集を示し、tlrO924がその細胞凝集に必須な因子であることが再現できた。ここでtlr1999破壊株は全体的に野生株よりも顕著な細胞凝集を示し、特に緑色光下で有意な細胞凝集を示した。これはTlr1999がシアン光下でc-di-GMPを分解することにより、TlrO924が生産したc-di-GMPによる細胞凝集という応答を、短波長側の紫~青の領域に制限していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度はtlr0924とtlr1999の二つの遺伝子について、そのタンパク質の生化学解析を行い、破壌株の表現型解析を行う予定であった。しかし実際には、残るもう一つの遺伝子であるtlrO911についても同様の解析を行うことができた。三年にわたる研究の年次計画のうち半分以上を遂行することができており、当初の予定よりもさらに進んだ研究が最終的にまとめられると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞内c-di-GMP量測定の系を構築し、c-di-GMPと細胞凝集の関連を示したい。破壊株を、アミノ酸変異を含む遺伝子で相補する実験により、c-di-GMP合成/分解活性に依存した機能であることを明らかにしたい。また、三つのシアノバクテリオクロム遺伝子の転写量を測定し、低温によって誘導されるのか、また、表現型が現れなかったtlr0911に関しては転写されているのかを確認したい。tlr0924とtlr1999の影響が大きいためにtlrt0911の破壊による表現型が現れにくい可能性も考慮して、年次計画通り、多重変異体の作製を進めたい。 これらの結果を用いて、複数のシアノバクテリオクロムが協調して機能するシステムに主眼を置いて論文をまとめたいと思う。
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Research Products
(3 results)