2014 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリオクロムによるc-di-GMPシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
13J08415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榎本 元 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光受容体 / セカンドメッセンジャー / シグナル伝達 / シアノバクテリア / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
解析対象である三つの光受容体、tlr0924, tlr1999, tlr0911 に関して、その多重(二重もしくは三重)遺伝子破壊株を作製した。表現型の解析は一年目と同様、四種の波長の光(紫、青、緑、赤)を照射したときの細胞凝集にて評価した。得られた結果から新たに次のことがわかった。 1. Tlr0924 は細胞凝集の誘導に最も重要な因子ではあるが、必須ではないこと。 2. Tlr1999 はあらゆる光条件下で細胞凝集を抑制することで、Tlr0924 以外の因子による細胞凝集の誘導を抑えていること。 3. これまで細胞凝集への寄与が不明瞭であったTlr0911は実際に細胞凝集の制御に関わっており、Tlr0924とTlr1999からなるコアに対して補佐的な役割を担っていること。 また、大腸菌由来タンパク質の異種発現系を用いた実験から、これら三つの光受容体による細胞凝集の制御がc-di-GMP というセカンドメッセンジャーを介したシグナル伝達により行われていることを示した。本研究は、細胞が示す光応答の光波長特異性とそのシグナル伝達の厳密性が、複数の光受容体の協調によって実現されているということを明らかにした。これは、シアノバクテリアにおいてシアノバクテリオクロム型光受容体が多数存在するという事実に対して初めてその意義を明らかにした点で重要である。二年目である本年度にて、当初の研究実施計画をほぼ完遂した。現在は上記の結果を含めて本研究の成果をまとめ、論文を執筆し、投稿作業中である。その前段階として、当研究室の前任者が行った、本研究の先行研究にあたる部分をまとめ、本年度にThe Journal of Biological Chemistry誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
解析対象である三つの光受容体、Tlr0924, Tlr1999, Tlr0911に関して、それらの個別の機能と、その関連を明らかにすることができた。これは当初3年かけて行うはずだった研究の大筋を既に完遂したことを示している。現在これらの結果をまとめ、本研究課題の集大成となる論文の投稿作業中である。よって本研究は計画以上の進展を見せており、最終年度である次年度にはさらなる発展を見せることができると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の年次計画のうち「タンパク質の詳細な生化学解析」が唯一遂行せずに残っているため、今後行っていきたい。具体的には、Tlr0924タンパク質の結晶構造解析を試みる予定である。解析対象である三つの光受容体は、c-di-GMPというセカンドメッセンジャーの細胞内濃度を、光環境に応じたかたちで協調して制御することが示唆された。現在までの先行研究で、c-di-GMPはセルロース合成酵素Tll0007を活性化することで細胞凝集を引き起こすことが示唆されているが、直接的な証拠はまだない。そこで今後、Tll0007がc-di-GMPを結合することを試験管内で直接示したい。二種の蛍光タンパク質を用いて融合タンパク質を作製し、蛍光共鳴エネルギー移動の測定により可能であろうと考えている。また、細胞内c-di-GMP濃度の測定を行い、表現型である細胞凝集との関連を調べたい。これらの解析により、本研究がより体系的かつ先駆的なものになると期待している。
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Research Products
(4 results)