2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎臓病治療法開発に向けたp53腎保護機能の解明及び、新規p53活性化法の開発
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13J08535
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 亮介 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | p53 / 慢性腎臓病 / Alport Syndrome / Podocyte / 微弱パルス電流 |
Research Abstract |
慢性腎臓病の1つであるAlport Syndrome (AS)のモデルマウスを用い種々の検討を行った。当年度においてはPodocin-OREマウス, p53-loxPマウスを交配させることによって慢性腎臓病の病態形成に重要な役割を果たすpodocyte特異的にp53を欠損したASマウスを作成することに成功した。podocyteにおけるp53の機能を調べるため, 経時的にpodocyte-p53WT AS, podocyte-p53KO ASマウスそれぞれの病態を比較した結果, podocyte-p53の欠損により病態進行が促進されることを示した。また, podocyte-p53WT AS, podocyte-p53KO ASマウスの腎臓より糸球体を単離し, RNAを抽出後マイクロアレイ解析を行った。その結果, podocyteにおけるp53が発現に変化を及ぼす遺伝子群を同定した。今後解析結果より得られた遺伝子に着目し, podocyte-p53のAS病態進行における役割を解明していく予定である。また, 新規にp53のリン酸化を誘導する物理的な刺激として微弱なパルス電流(Mild Electrical Stimulation ; MES)を見出した。このMESは0.1msecのパルス幅, 電圧6V, 55pulse/secという特殊な条件において最も効率的にp53のリン酸化を誘導すること可能であり, p38MAPKシグナル経路を介し, 数あるp53リン酸化部位の中でも特にSer-15のリン酸化を誘導していることが明らかになった。また, MESによるp53リン酸化はp53の機能活性化に十分であることも示され, p53標的遺伝子の転写活性化やG2期での細胞周期停止効果も認められた。一方, MESによるp53活性化は細胞傷害性を示さないユニークな刺激であることが分かり, 疾患治療に有用な手法となり得ることが示唆された。本知見は学術雑誌に掲載された(J Biol Chem. 2013 May 31 ; 288 (22) : 16117-26)。また, この手法はASにおいて病態進行抑制効果も確認されていることから他の慢性腎臓病への応用についても期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的としていたpodocyte特異的p53欠損ASマウスの作成及び, 病態の評価を概ね完遂することが出来た点, マイクロアレイ, プロテオーム解析を用いてASの病態関連因子を網羅的に解析できた点から当初の目標通りに進行していると判断した。また微弱パルス電流に関する研究では特定条件下においてp53の活性化を誘導できることを学術誌に投稿したことから目的を達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
podocyte特異的p53欠損ASマウスにおいて病態進行に寄与する分子を同定することにより, p53により調節される新規の慢性腎臓病治療標的を見出す事が出来ると考えられる。今後はP53及び同定された分子を治療標的とすることでASの治療に焦点を当てた検討を行っていく予定である。その後それらの結果をまとめ, 学術雑誌, 学会等で報告を行う。また, MESによりp53の活性化を行えることを示したことから, MES処置がin Vivoにおいてpodocyteのp53活性化を誘導するかを検討し, 病態改善作用を示すか否かを調べる予定である。本知見より物理刺激とい新たな概念を基にした慢性腎臓病治療法の確立を目指す。
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Research Products
(2 results)