2013 Fiscal Year Annual Research Report
J.デリダにおける〈存在〉と〈他者〉:R.ラポルトの音楽概念との関わりを中心に
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13J08880
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 花子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ロジェ・ラポルト / デリダ / ブランショ / ビオグラフィ / 音楽 / 歌 |
Research Abstract |
平成25年度は、当初の計画通り、ジャック・デリダの中期著作群に散見される音楽的なモチーフと〈存在〉および〈他者〉の結びつきを明らかにするという本研究の目的に沿い、ロジェ・ラポルトにおける音楽概念の射程をめぐる研究をおこなった。本年度の前半は、デリダが「音楽の力のおかげで残るもの」(1979)で言及するラポルトの著作の読解をおこなったほか、ラポルトがモーリス・ブランショを論じる際に着目する聴覚的な要素の位置づけを分析した。後者の成果は比較思想の観点から論文としてまとめ、UTCP-Uehiro Booklet1に発表した(2013年8月)。夏以降は、1980年代にデリダが展開した「歌」をめぐる思考を同時代の思想史に位置づける布石として、ブランショにおける歌概念の分析および音楽の問題に集中的に取り組んだ。ブランショにおける声楽的な歌概念については、表象文化論学会『表象』に論文を発表し、今年度中に受理された(2014年4月刊行)。音楽の問題については、2014年3月にハワイ大学で開催された第14回Uehiro Graduate Student Conferenceに参加し、成果を口頭発表した。なお、研究指導委託制度を利用して9月末よりパリに渡航し、パリ第8大学で指導を受けると同時に、日本では収集することができなかったラポルトの資料を入手し、音楽概念の生成過程について包括的に分析する手はずを整えることができた。それ以外の主な成果としては、2013年10月・11月にブルガリアで行われた国際シンポジウム「変身とカタストロフィ」において、ブランショにおける変身の問題についての口頭発表をおこなったことがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プランショにおける音楽をめぐる問題の解明が進んだことに加え、予定より早く渡仏できたために、資料収集および研究動向の把握という点から、当初の計画以上にラポルト研究は進展している。デリダのテクスト読解はやや遅れているが、総合すると本年度の研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き、資料調査・読解と成果の発表を継続的におこなっていく。今後は、ラポルトにおける音楽概念と「ビオグラフィ」との結びつきの解明が望まれるだろう。自伝的なものと、聴覚的なモチーフが担う倫理的な主題とのかかわりを問うことも必要となる。
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Research Products
(5 results)