2013 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸塩中のウラン系列核種分析法開発と高分解能放射性炭素から探る中・低緯度水循環
Project/Area Number |
13J09053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関 有沙 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ウラン系列核種 / 年代測定 / HR-ICP-MS / 古環境復元 / 炭酸塩 / 鍾乳石 / サンゴ / 水循環 |
Research Abstract |
本研究では、気候予測における不確定要素である中・低緯度の水循環過程の解明に貢献するため、炭酸塩を代替指標として用いることで過去の水循環の復元を行う。特に、陸域の石筍・海洋域のサンゴなど、陸と海の水循環過程をそれぞれ記録している炭酸塩試料を高時間解像度で統合することで、黒潮と東アジアモンスーンの両者の変動に着目して水循環の復元を行うことを目的としている。 複数の炭酸塩試料から復元した記録を高時間解像度で統合するためには、高精度年代測定が不可欠である。石筍およびサンゴの高精度年代測定にはウラン系列核種の高精度分析が不可欠であるが、これらの試料の高精度年代測定は日本ではまだ行われていないのが現状である。 そこで、本年度は、ウラン系列核種の高精度分析手法確立のための検討を主に行った。本年度前半は、東京大学大気海洋研究所の高分解能型誘導結合プラズマ質量分析計(HR-ICP-MS)を用いて、ウラン系列核種の微量分析に必要な分析手法の検討を行った。その過程で、ドイツ・ブレーメンのThermo Fisher Scientific社の技術研修に参加し、高精度分析に必要な機器の調整方法の技術を学んだ。また、年度の後半には、ウラン系列核種の分析手法を既に確立しているオーストラリア国立大学の地球科学研究所に2ヶ月間滞在し、分析手法を学んだ。 分析手法開発では、HR-ICP-MSの運転に必要なガスの購入や機器の部品購入に多額の費用が必要であった。そのため、本年度の2回の海外渡航については、他の旅費の補助を受け、また、特別研究員の研究遂行経費を使用して渡航を行うことで、当初予定していたよりも多額の科学研究費補助金を物品費として使用することができた。本年度の2回の海外渡航により、日本国内にノウハウが乏しい、鍾乳石やサンゴなどの炭酸塩試料のウラン系列核種の分析法について学ぶことができた。次年度は、本年度得た技術を基に、引き続き分析手法開発を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ウラン系列核種の高精度分析手法の確立に向けた基礎実験や技術研修を主に行った。 二度の海外渡航等のために日程の調整がつかず、研究実施計画に記載した鍾乳洞環境調査は行うことができなかったが、分析手法確立に向けた技術研修などで予想以上の成果を得ることができたため、研究全般を鑑みた際には、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度後半の海外渡航で得た技術を基に、引き続きウラン系列核種の高精度分析手法の開発を行う。東京大学大気海洋研究所での分析手法開発の過程で、既に分析手法が確立している機関での比較分析が必要となる。この比較分析を行うため、平成26年度後半には、再度オーストラリア国立大学の地球科学研究所を訪問する予定である。 また、海外渡航との日程調整ができず、本年度中に実施できなかった鍾乳洞環境調査も次年度に実施する予定である。 ウラン系列核種の分析手法開発がある程度進行した時点で、実際の試料の分析を行う。
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Research Products
(2 results)