2014 Fiscal Year Annual Research Report
華南権益をめぐる近代中仏外交史 -仏領インドシナの形成との関係で-
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13J09057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 明利沙 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近代東アジア / 国家 / 帝国主義 / フランス外交史 / 国際情報交換(フランス) / 植民地 / フランス:中国:日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
近代ヨーロッパの植民地主義の時期における、フランスによる仏領インドシナの形成と保持という広域史の視角と、それに関連しておこった中国華南地域の権益をめぐる中国-フランス間の外交や中国現地の反応等の地域史の視角を組み合わせ、中仏双方の史料を用いつつ近代東アジア国際関係史を立体的に描き出す研究を行っている。 今年度の前半期は、学内の研究会等で報告を行い、特に中国史研究者から意見をもらい自身の研究に役立てた。現在の東南アジア地域の重要な経済開発地区とも隣接する中国の華南地域について、これまで日本や中国、台湾そして欧米圏に於いてどのような研究が行われてきたのか整理した。これらの作業によって、華南現地における中仏間交渉のケーススタディーの少なさが浮き彫りになった。今年度は、仏印に比べフランスの支配力が弱かった中国と仏印の隣接地域である華南において、中仏間で具体的にどのような法的規定が編み出され、実行力をもつようになっていったのかという点に焦点を絞り研究した。これを明らかにしていくことは、仏領インドシナという存在を介した中仏関係の考察に留まらず、国家という枠組みを分析することにもつながる。 今年度の秋以降は、研究指導委託制度を利用して、フランスの社会科学高等研究院(EHESS)において研究を行った。フランス国内で行われる歴史学関連の研究会やコロキアムに積極的に参加・欧米にいる研究者と交流し、近年のヨーロッパの歴史学の傾向を把握した。これまでに学んだ日本や中国に於ける東アジア国際政治史や近代中国研究の状況を踏まえた上で、それらと比較する視点を持ちつつヨーロッパから見たアジア研究の実態を見聞きしまた自らの研究に対するフィードバックをもらったことで、自らの研究やアジアに於ける東アジア研究をどのように位置づけるかという課題に対してもより広い視角をもって取り組むことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度後半期からは、当初の計画通りフランスに渡り史料調査と研究指導委託をおこなった。パリやナント等の文書館では、長期滞在の利点を生かして網羅的かつ詳細に史料調査を実行することが出来た。特にパリの文書館では、仏印と中国の隣接地域における「混合裁判所」の設置問題や、犯罪者の移動に関する問題に焦点を絞り史料調査を行った。近代のこの時期に、中国とフランスの間で具体的な法規定がいかに形成されていき、何を根拠としてどのように実効力を持つようになっていったのかについて具体的にケーススタディーに基づいて調べることで、当時の清朝とフランスの関係や、国際法の実態について明らかにした。 また、日本にいる間は難しかったヨーロッパや在仏の東アジア研究者と意見交換等の交流を行うことが出来たことで、ヨーロッパ史、アジア史の双方から東アジア近代史とらえる多角的な視座を獲得し自身の研究を新たな視点から見つめ直すことができた。また、博士論文の一部となる論文の執筆も進み、さらに博士論文の先に取り組むべき新たな課題へのアイディアも得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、史料調査と分析を並行して進め、博士論文の執筆を行いその完成を目指す。史料は、1890年代から1900年代にかけての特に仏印と中国の隣接地域における法の整備に関するものを中心に収集する。具体的には、パリとナントの外交文書館、エクサン・プロヴァンスの海外領地文書館、北京の文書館や台湾の中央研究院近代史研究所に赴き史料調査を行う。その他、国内外の研究会や討論会に積極的に参加し意見交換を行い、投稿用の論文の準備も進める。 また、これまでは中仏の史料収集を中心におこなっており主に中仏の二国間の外交や交渉過程に着目してきたが、今後は可能な範囲で日本やイギリスの史料も使用し、近代東アジア地域とヨーロッパ世界との対峙や各国の帝国主義の実態の比較という、より広い観点も含めながら本課題へのアプローチをおこないたいと考えている。
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Research Products
(3 results)