Research Abstract |
本研究は, 超高温延性領域内における地熱開発時の, 誘発微小地震の発生に関して岩石力学・地震学の新理論を導出するとともに, 数値シミュレーション, 室内実験等により貯留層内外での地震発生現象の解明を試みる。これにより, 超高温延性領域内における能動的地熱開発時の誘発微小地震の発生可能性, 発生メカニズム, 有感地震発生リスク, 微小地震による貯留層モニタリングの可能性を明らかにすることを目的とする。 本年度は, まず交付申請書の研究計画に記載した(A)誘発微小地震発生に関わる岩石力学・地震学的理論の導出を行い, 対象としている条件下での破壊現象の支配パラメータを検討した。その結果, 超高温延性領域では, 水圧刺激による水圧の変化より, 高温岩体と注入された流体間の温度差による熱応力による応力変化が大きく, 破壊現象, つまり誘発微小地震の発生に大きく関与する可能性が高いことが分かった。 以上の検討より, 超高温延性領域における地熱開発時の熱応力の発生に係る現象を理解することが必要である。交付申請書の研究実施計画に記載した研究計画の通り, この現象を数値シミュレーション, 室内実験のアプローチで解明することとした。しかし, これまで地下の高温岩体と注入水間の温度差により発生する熱応力の挙動は, 全く解明されておらず, 単純に一般的な熱応力の式をシミュレーションコードに組み込むだけでは物理現象を表現できない。そこで, まず実験的に熱応力の発生を再現し, その現象の解明に迫ることとした。受入研究者の伊藤教授の研究室は, 高温状態下での様々な岩石実験が可能な高温三軸試験器を有しており, 初年度はこの実験装置の整備, メンテナンス, 改良を行い, 次年度より熱応力の計測が可能な環境を準備することに専念した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書の研究実施計画に記載した研究計画では, 本年度は主に(A)理論の導出, それに基づく(B)数値シミュレーションを行う予定であったが, 理論的検討の結果, (C)室内岩石実験を行い実際に熱応力が発生する現象を明らかにする方が, 有効であると考えた。そのため, 既存の実験装置, それに係る設備のメンテナンス調整, 改良に多くの時間を費やすこととなり, 研究全体としては遅れが少々生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
延性脆性遷移領域における能動的地熱開発時の誘発微小地震に関する破壊現象の理論的検討より, 注水・冷却により発生する熱応力を室内岩石実験により再現し, その挙動を明らかにする。本年度, 既存の高温三軸試験器のメンテナンス, 調整, 改良はほぼ終了しており, 来年度からは予備実験, 本実験を実施する予定である。 またここで得られた熱応力の発生に関する知見をもとに, (B)数値シミュレーションでも同条件下での破壊現象を模擬する解析を実施する予定である。
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