2013 Fiscal Year Annual Research Report
低スケール弦模型の現象論的特性とLHC実験における詳細検証
Project/Area Number |
13J09321
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋 真奈美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 階層性問題 / 大きな余剰次元 / 超弦理論 / TeVスケール弦 / LHC実験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、重力相互作用を量子的に記述すること、素粒子物理に存在するスケールの階層性を説明することが期待される、"低スケール弦模型"の現象論的な特性を見い出し、LHC実験で詳細に検証することである。そのために、研究(A) LHC実験における弦の第2励起状態の発見可能性の検証、研究(B) D-ブレーン模型に特有の光子+ジェット終状態の解析、を実施する予定であった。 しかし、平成25年度中に研究論文を発表することはできなかった。平成24年2月発表の論文と、平成25年3月発表の論文では、弦の散乱振幅について先行研究の結果を用いていた。また、これらの論文では、模型の詳細に依存しない信号のみが観測可能であると指摘したため、模型の構築に関する知識を必要としなかった。しかし、博士論文の執筆や、研究(A)、(B)を行うためには、弦の散乱振幅の計算手法や、想定している模型が矛盾なく構築されていることを理解する必要があった。そのため、平成25年度の前半では、(1)弦理論に関する基礎的・発展的な勉強を行い、後半では、(2)博士論文の執筆と、研究(A)を行うために必要な、より発展的な計算手法についての勉強を行った。 (1)弦の散乱振幅を計算するためには、弦理論を記述している2次元共形場の理論と、弦の散乱のS行列を理解している必要があったので、これを勉強した。次に、現実的な理論として考えられている超弦理論について学び、超弦理論において、交差したD-ブレーンを導入することによって標準模型の粒子を再現するような模型について調べ、模型が矛盾なく構築されるための条件について理解を深めた。 (2)博士論文において、弦理論に関する基礎的・発展的な内容の包括的なレビューを執筆したことは、より理解を深める助けになった。また、研究(A)を行うためには、より発展的な弦の散乱振幅の計算手法について会得している必要があった。弦の第2励起状態の発見可能性を検証するためには、第2励起状態の崩壊幅を正確に評価する必要がある。第2励起状態の崩壊幅は、第1励起状態を含む弦の散乱振幅から計算されるため、特に、第1励起状態の頂点演算子の構築について理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
交付申請書に記載した研究が基づいている理論に関し、基礎的な理解が不十分であったため。 研究を遂行するため、まずは基礎的な勉強を行う必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究(A)弦の第2励起状態の発見可能性の検証を遂行するためには、第1励起状態を含む弦の散乱振幅だけでなく、複雑な境界条件を持つ弦の散乱振幅を計算する必要がある。複雑な境界条件を持つ弦の状態の頂点演算子の構築と、相関関数の計算について理解を深めなければならない。さらに、弦の励起状態は終状態の波動関数が一般的ではない形になる。このような特殊な波動関数について調べる必要がある。しかし、上記の2点を理解すれば、散乱振幅の計算を完了でき, LHC実験を想定した現象論的な解析については、その手法がすでに確立しているため、順次行うことが可能であると考えている。 研究(B)D-ブレーン模型に特有の光子+ジェット終状態の解析については, 計画を変更する必要がある。現在、LHC実験において標準模型以外の信号が観測されていないため、具体的な模型を構築せずに、現象論的な解析のみを行う研究の価値はあまり高くないと考えている。そこで、具体的な低スケール弦模型を構築することを考える。今回は、D5-ブレーンを用いて弦のスケールを低くとり、ブレーンを磁場中に置くことで、標準模型の粒子と結合を再現するような模型の構築を目指す。
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