2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国キリスト教史の地域的展開についての研究-1880-1920年代の広東を中心に
Project/Area Number |
13J09671
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
土肥 歩 京都橘大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 広東 / キリスト教 / 地域社会 / 華僑 / 宣教師 |
Research Abstract |
1858年、天津条約締結によってキリスト教布教団体の内地布教権が認められると、中国人の地域有力者は、宣教師や信者の増加を既存の儒教的な地域秩序を脅かす存在であると見なすようになる。そして、中国各地の地域社会において、地域住民が外国人宣教師や中国人信者に対する暴力事件(教案)が頻発する。従来の近現代中国キリスト教史研究において、教案は数多く論じられ、1900年の義和団事件に至る排外運動史としての位置づけを与えられてきた。 しかし、人口の流動性が高く、19世紀初頭からプロテスタント諸教派によって盛んに布教が行われていた南方中国の沿岸部(広東・香港・福建など)においては、必ずしも地域社会とキリスト教布教の対立関係のみが一元的に存在したわけではない。むしろ、宣教師及び中国人信者の活動に(在外中国人を含む)非信者層が積極的に関与する営為が存在したことも忘れてはならない。本研究では、キリスト教布教団体やキリスト教会の活動がどのように教会外部の有力者層との利害を一致させて関係を維持していたのか、1850年代から1900年代の広東省を事例として明らかにすることを目的とする。 以上の目的を達成するために、平成25年度はニュージーランド長老教会が行った広州郷村布教団(Canton Villages Mission、以下CVMと略)に注目して研究を進めた。CVMは、ニュージーランドの中国人が帰国するネットワークを利用して、広州郷村で展開された特色を持つ。しかし、これまでの研究では、そのネットワーク上にどのような中国人が存在したか十分に議論されていなかった。それゆえ、昨年末は、ニュージーランドにあるノックスカレッジを訪問し、CVMについての報告書やCVM所属の宣教師ジョージ・マクニュールに関する個人資料を収集することができた。 また、こうした資料収集と並行して上述の問題関心をまとめて博士論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は上述の問題関心をテーマとして、博士論文を提出し、博士号を取得することができた。それだけでなく、平成25年度末にニュージーランドを訪問して、ニュージーランド長老教会の中国布教に関する必要な資料を収集することができた。それゆえ、研究計画は予想以上に成果を収めつつあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
一点目に、ニュージーランドで収集した資料を継続的に精読することである。おもにニュージーランド長老教会所属の宣教師ジョージ・マクニュールの日記を体系的に解読して、地域社会の実態を明らかにすることが重要である。ただし、ニュージーランドの資料群は1900年以降のものが多く、それ以前の広州を論じるにあたっては別の布教団の資料が必要である。 そのため、二点目に、本年はアメリカ長老教会布教団が広州に派遣した宣教師に注目する。特に、1850年代から1900年代までの本国宛ての報告書を体系的に収集し、精読するつもりである。
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Research Products
(3 results)