2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国キリスト教史の地域的展開についての研究-1880-1920年代の広東を中心に
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13J09671
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
土肥 歩 京都橘大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中国 / キリスト教 / 宣教師 / 地域社会 / 史料 / 清末 / 国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の実績は以下の4点に大別される。 まず一点目に、英語で論文執筆を行ったことである。本論文は日本語と中国語で発表されていた内容に改訂を加えたものである。改訂に当たっては、新たに資料を付け加えたり、よりシンプルな論理構成にしたり、英語の読みやすさに注意して論文を執筆した。 二点目に、書評を執筆したことである。『中国研究月報』編集部からの依頼より、菊池秀明氏の著書『金田から南京へ:太平天国初期史研究』(汲古書院、2013年)の書評を執筆した。今回、上帝会の武装蜂起から南京占領にいたる太平天国建国初期の歴史を全面的に見直した菊池氏の著書と向き合うことで、太平天国が有したキリスト教的な思想について理解を深めることができた。 三点目に、平成26年11月に東洋史研究会大会にて学会報告を行ったことである。平成23年度と平成25年度における2度のニュージーランドでの資料調査で、宣教師マクニュールの日記を閲覧する機会を得た。私は彼の現存する日記を解読し、辛亥革命以前の広東郷村地域の実態を解明する手がかりとした(この際、受入研究者である蒲豊彦氏との面談と清末広東社会の研究者である宮内肇氏の助言を通じて、報告内容を具体化させた)。この報告では、1900年代初頭に清朝中央が行った政治や教育分野における政治・社会改革(光緒新政)を背景として、郷村地域の人びとが宣教師との接触を通じていかに社会の変化(=近代化)に適応したかを実証的に論じた。 四点目に、ニュージーランドでの資料調査である。当初の研究計画ではアメリカでの史料調査を予定していた。しかし、三度目のニュージーランドでの調査を敢えて行ったことで、私が現在すすめている研究課題について更に理解を深めることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
その理由は以下の通りである。 1,平成26年度は、論文執筆よりも資料精読に力点を置いた1年だったからである。とくにニュージーランド長老教会ミッションの宣教師ジョージ・マクニュールが残した日記の精読を継続的にすすめることができたので、今後の研究を進める上で重要な基礎を築くことができたと言える。 2,英語論文を執筆し、関連する研究書の書評を書いたからである。こうした研究活動は私自身の学識を広める上でも、とても有意義であった。 3,学会での報告や学会でのコメンテーターを行い、研究者との交流をすすめることができたからである。平成26年度は11月に東洋史研究会大会で学会報告を行っただけでなく、同月末に台湾のシンポジウムでも報告を行った。さらに、12月には日本華南学会大会にコメンテーターとして出席した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実績と達成度を概説した結果、平成27年度の研究計画を以下の通り定めることができる。 一つ目は、投稿論文の執筆である(2015年6月~9月)。すでに述べたとおり、平成26年度は資料精読に重点を置いた一年だった。そのため、平成27年度は昨年度に精読した資料をもちいて、投稿論文として発表することを最優先に考える。これに関して、私はすでに2本の論文執筆に着手している。まず、昨年11月に東洋史研究会大会で報告した内容についての論文である。この論文は雑誌『東洋史研究』への投稿を予定している。次に、宣教師による飢饉救済についての投稿論文である。本課題は広東省を対象地域としているものの、研究の裾野を広げるためにも、飢饉救済からみえる広西と広東の関連性を論じるつもりである。この論文は雑誌『中国研究月報』に投稿する。 二つ目は、博士論文の出版である。平成25年度末に博士号を取得して以来、提出した博士論文への加筆修正を行ってきた。出版助成に応募し、年度内の単著公刊を目指したい。 三つ目は、収集済み資料の精読である。過去2年間に集めた資料の分類はおおむね終了している。そのため、平成27年度は香港やニュージーランドで入手した資料を系統的に読んでいく(2015年10月~2016年3月)。
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Research Products
(3 results)