2013 Fiscal Year Annual Research Report
海馬が合成する性ホルモンによる神経シナプス増強と記憶制御機構の研究
Project/Area Number |
13J09760
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 賢卓 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 長期増強 / 女性ホルモン / NMDA型グルタミン酸受容体 / オス海馬 / 女性ホルモン受容体 |
Research Abstract |
オス海馬は女性ホルモンE2を合成している。このE2の神経シナプス作用の新しい信号経路を見出すことを目的とした。海馬において、記憶の書き込み過程である長期増強LTPを、30分間E2作用させて、weak-シータバースト刺激を用いて誘導するという、電気生理測定を行った。ここでE2が無いとweak-シータバースト刺激のみではLTPは成立しない。1. E2は女性ホルモン受容体ERaとERβを介して、LTPを成立させることを、ERαとERβの阻害剤ICIを用いて、見出した。2. ERαとERβの下流では、PKA, PKC, MAPKを駆動することで、LTPを成立させることを見出した。PKA, PKC, MAPKの選択的阻害剤を加えるとLTPが成立しなくなったからである。3. E2の急性的な効果にNMDA型グルタミン酸受容体のサブユニットNR2Bが関与すると考え調べたところ、LTP成立に必須であることが判明した。NR2B阻害剤を加えるとLTPが成立しなくなったからである。4. NR2Bのリン酸化の結果NMDA受容体からより多くのCa^<2+>が流入することが考えられるので、この高濃度Ca^<2+>流入によって、CaMKIIが働いているかを調べた。結果はLTP成立に関与することを見出した。CaMKII阻害剤を加えるとLTPが成立しなくなったからである。以上1-4の結果をまとめると、E2のLTP成立支援効果の信号伝達メカニズムは、E2→ERα/ERβ→PKA, PKC→MAPK→NR2B→Ca^<2+>↑→CaMKII→LTPの成立となっていることを明らかにした。5. ERαやERβの作用先として、代謝型グルタミン酸受容体mGluRlの関与がメス海馬では示唆されている。オス海馬でも、mGluRlが関与しているかを調べた。結果はE2のLTP成立効果に関与しなかった。以上から、E2のLTP成立効果の信号系には性差があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
E2の神経シナプス作用の新しい信号経路を見出すことに成功したためである。PKA, PKC, MAPKだけにとどまらず、NMDA型グルタミン酸受容体サブユニットNR2Bの関与やCaMKII阻害剤を使用することで高濃度Ca^<2+>流入によって、CaMKIIが働き、E2のLTP成立支援効果が引き起こされていることも見出したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
オス海馬が合成する男性ホルモンの複数の信号伝達系を明らかにすることを目的に実験を行う。以下を電気生理測定により調べる。(1)女性ホルモンE2と同様にweak-TBSを増強させる効果があるか。また、T・DHT→PKA, PKC→MAPK→NMDA受容体やAMPA受容体のリン酸化の経路が働いているのか。(2)AR→mGluR1→Gs→cAMP↑→PKA↑→CREBリン酸化経路はあるのか。(3)男性ホルモンと女性ホルモンでの経路の違いや役割の違いを見出す。
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Research Products
(2 results)