2013 Fiscal Year Annual Research Report
60年に及ぶ分断・障壁(ダム)の解消に伴う河川水生昆虫の個体群動態の究明
Project/Area Number |
13J10312
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
斎藤 梨絵 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 遺伝的分断化 / 個体群動態 / ミトコンドリア遺伝子 COI領域 / ダム |
Research Abstract |
本研究では、60年間の遺伝的分断化が予測されるダム堤体の上-下流域間、およびダム湖に流入する各支流の水生生物個体群間における大規模ダム(障壁)の解消に伴う生物の個体群動態を究明する。本研究では、まず、ダム存在下とダム解消下で遺伝子流動の規模はどの程度変化するか(ダム撤去により広域な遺伝子流動が生じるのか)、さらには河川の連続性が再生されることで個体群構造に劇的な変化が起きるのかといった物理的障壁の解消に伴う遺伝的構造の変化について究明する。この課題に対し、水生昆虫(ヒゲナガカワトビケラ, チャバネヒゲナガカワトビケラ)を主として扱った。球磨川水系の本川・支川のうち18河川全213サンプルに関して、ミトコンドリア遺伝子COI領域の解析をし、遺伝的多型評価や調査地点レベルでの遺伝的多様性の評価を行った。その結果、ヒゲナガカワトビケラに関しては、球磨川水系全体に優占するハプロタイプが存在すること、ヒゲナガカワトビケラ, チャバネヒゲナガカワトビケラともに、上流域に比べて下流域での遺伝的多様性が低いことが明らかとなった。また、ダム撤去開始後である2013年5月に、球磨川水系の本川・支川の47調査地点でサンプリングし遺伝子解析サンプルを採集・確保した。サンプリングの際、ダム撤去開始後の2012年度より新規創出された流水環境にも採集地点を設けた。これにより、今後、本研究の課題の一つとして挙げている、「新規流水環境下における時間経過に伴う個体密度と遺伝的多様性の変遷の追究」が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度の研究活動において、現地での網羅的なサンプリングを最重要課題としていた。ダム撤去開始後に、球磨川水系の本川・支川の47調査地点でサンプリングし、1地点あたり20を超える遺伝子解析サンプルを採集・確保した。また、18河川全213サンプルに関しては、ミトコンドリア遺伝子COI領域の解析を済ませ、遺伝的多型評価や調査地点レベルでの遺伝的多様性の評価を済ませている。以上の成果に関しては、水生昆虫研究会において口頭発表し、高い成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、球磨川水系の本川・支川のサンプルにおけるDNA抽出を適宜すすめ、より一層データの充実を図ること、さらにはより感度の高いマイクロサテライト・マーカーを用いた解析が重要となる。マイクロサテライト・マーカーについては、既に4座位におけるマーカーの有用性を確認している。
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Research Products
(1 results)