2013 Fiscal Year Annual Research Report
電離ブラズマX線、非熱的制動放射、GeVガンマ線から探る新たな宇宙線加速源研究
Project/Area Number |
13J10524
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福山 太郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 / ガンマ線天文学 / 超新星残骸 / 宇宙線 |
Research Abstract |
X線天文衛星すざくにおける本年度の公募観測で、電波からTeVカンマ線まで非熱的放射が検出されているシェル型の銀河系内超新星残骸(SNR)であるVela Jr. について、全域をカバーするマッピング観測を完遂し、これにより、2 keV 以上の硬X線において初めてVela Jr. 全体の情報を得たことになる。この観測の結果から、Vela Jr. のシンクロトロンX線放射が両側性の空間構造を持つことが明らかになった。近年のSN 1006 の電波による偏光観測から、このような空間構造と星間磁場の向きには関係があることが示唆されており、これはSNRにおける粒子加速の最大の謎である加速への粒子注入の過程を解明するための重要な鍵となることが期待されている。今回のVela Jr. の結果も、SN 1006 の結果をより強固な物とすることが期待されるが、詳細は電波による全域の偏光観測を待たなければならない。また、Vela Jr. のシンクロトロンX線放射の光子指数の空間分布を調べ、光子指数が空間に依存して変化することが明らかとなった。さらに、SNR内のガスの運動や加速粒子スペクトルの時間的変化や星間磁場依存性などを考慮した3次元的なシンクロトロン放射モデルを構築し、観測とモデルのイメージについて動径方向のプロファイルの比較を行った。結果、Vela Jr. 周辺の星間磁場は視線方向に垂直かそれに非常に近い向きを向いていることが明らかになった。これらVela Jr. の研究成果についてはSuzaku-MAXI conferenceならびに日本天文学会春季年会において発表を行い、現在論文としてまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的な非熱的超新星残骸Vela Jr.の硬X線での全域観測を初めて完遂し、超新星残骸における非熱的粒子加速に関して非常に示唆に富む情報を手に入れることができ、その結果を国際学会、国内学会の両方で発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した超新星残骸におけるシンクロトロン放射のモデルを、星間空間の非一様性や、乱流などの効果を取り入れることで、超新星残骸における粒子加速に関するより本質的な物理量の抽出を試みる。 すざく衛星の硬X線検出器まで取り入れた解析を行い、超新星残骸における加速の最高エネルギーに関する情報を得ることを目標とする。
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