2013 Fiscal Year Annual Research Report
結核菌感染における疾患感受性遺伝子ならびに薬剤治療有効性決定遺伝子の同定
Project/Area Number |
13J10599
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大前 陽輔 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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Keywords | 結核 / ゲノムワイド関連解析 / 国際情報交換 / タイ王国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、結核菌による感染症である結核について、病状の発症並びに薬剤治療有効性に与る宿主の遺伝的要因を結核菌の遺伝的背景の情報と患者のゲノム情報とを組み合わせて統合的に解析することである。平成25年度の研究においては、受入研究室の先行研究によるゲノムワイド関連解析(GWAS)により同定されていた若年性結核における発病関連因子に対して、結核菌の遺伝的背景の情報を加えた解析を行った。結核菌の分類は、結核菌の遺伝的マーカーに基づいたPCRによる遺伝系統分類法に従った。タイNIHとの共同研究により収集されているタイ人若年性結核サンプル127検体のうち、67検体について結核菌のゲノムが解析に利用可能であり、そのうち57検体について結核菌の遺伝系統を決定できた。既報の若年性結核感受性遺伝因子について、この結核菌遺伝系統の情報による分類を加えてケースとコントロールの比較を行った結果、ある遺伝系統の感染検体群では、この遺伝因子の関連が見られるのに対して、別の遺伝系統の感染検体群では、遺伝因子の関連が見られなかった。この結果は、既報の若年性結核感受性遺伝因子が、特定の遺伝系統の菌株の感染に依存していることを示唆している。したがって、宿主の結核発症関連遺伝子の同定においては、宿主の情報だけでなく、結核菌の情報も加えて解析することが有用であることを明らかに出来た。 また、本年度においては、本研究計画で用いるゲノムワイド関連解析およびヒトにおける遺伝子型解析の習熟のため、受入研究室で行われている様々な共同研究プロジェクトにも参加してきた。それにより、人類遺伝学における解析の流れおよびその原理について一通りの経験は得られてきたと考える。前年度までの受入研究室にて学術振興会特別研究員(DC2およびPD)として行ってきた研究についても、複数の論文発表を行い、実績を積むことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は、平成25年度より受入研究室における結核症関連のプロジェクトに参加し、平成25年7月にタイで行われたミーティングに参加するなど共同研究者との交流を深めてきた。研究成果についても、平成25年度に行った結核菌遺伝系統別の若年性結核発症感受性遺伝因子の解析は、宿主ゲノム情報と結核菌ゲノム情報を統合的に解析するという世界的に見てもオリジナルな研究展開であり、今後の結核症感受性遺伝子研究の大きな足がかりとなると期待される。また、人類遺伝学教室で行われている様々な疾患に対するゲノムワイド関連解析を用いる共同研究にも積極的に参加し、人類遺伝学の分野で用いられるゲノムワイド関連解析の解析手法とその原理に習熟することが出来た。研究費の繰越事由となった、ゲノム解析用カスタムアレイプレートの不具合という問題は発生したが、今後の研究の足場を固めることが出来た点を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、タイNIHおよび理化学研究所、結核予防会との共同研究によりさらに解析対象検体数を増やすことを目指すとともに、宿主側の解析対象遺伝因子を増やし、特定の遺伝系統の菌株の感染において特徴的な宿主の遺伝要因の同定を目指していく。 もう一方の研究対象である薬剤治療有効性決定遺伝子の探索についても、現在理化学研究所との共同研究により、タイおよびインドネシアにてサンプル収集が進行中である。平成25年7月には、JSPS支援の研究拠点形成事業(結核症と類縁疾患の宿主・マイコバクテリウム相互作用に関する国際共同研究体制構築)でのタイにおける共同研究者とのミーティングに参加し、平成26年7月21-25日にも再びタイにて共同研究者とのミーティングに参加する予定である。また、定期的に共同研究者とのウェブミーティングも行ってきている。
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