2014 Fiscal Year Annual Research Report
甲殻類幼生におけるゼラチン質動物プランクトンを用いた有効餌料の基本性質の解明
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13J10983
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
若林 香織 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウチワエビ / フィロゾーマ / クラゲ / ゼラチン質動物プランクトン / 種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,甲殻類幼生,とくにイセエビ・セミエビ類の幼生(フィロゾーマ)が最も効率的に成長・生残し得る餌の性質を明らかにしようとするものである。フィロゾーマは天然海域においてクラゲなどのゼラチン質動物プランクトンを食べている可能性が高いので,ゼラチン質動物プランクトンの基本性質とフィロゾーマの摂餌生態を明らかにすることを目指している。
ウチワエビ属2種(ウチワエビ,オオバウチワエビ)のフィロゾーマはクラゲだけを食べて成長し,変態・着底を経て稚エビに脱皮することが昨年度までに分かった。今年度は新たにウチワエビモドキ属の一種(オーストラリアウチワエビモドキ)についても同様の結果を得た。また,ヒメセミエビ亜科の2種(フタバヒメセミエビ,Petrarctus demani)においても,稚エビは得らなかったものの,フィロゾーマはクラゲだけを食べて脱皮・成長し発育後期にまで至った。クラゲは,セミエビ類の種苗生産において汎用性の高い餌資源となり得ることが示唆された。
ウチワエビ属のフィロゾーマに様々な動物プランクトンを個別に与えてその捕食行動を観察した。投餌後30分以内のフィロゾーマによる捕捉頻度は,ゼラチン質動物プランクトンでは92.3-100%であったのに対し,カイアシ類など非ゼラチン質動物プランクトンでは0%であった。一方,湯煎処理(40-50 ℃,30-60分間)を施して餌動物の動きを止めた場合,非ゼラチン質動物プランクトンの捕捉頻度は12.5-27.8%に上昇した。また,ゼラチン質や動きの有無に関わらず,体表面積の大きい餌ほど捕捉頻度は高かった。なお,フィロゾーマは捕捉に成功すれば餌の種類に関係なく摂餌した。以上の結果から,ウチワエビ属のフィロゾーマは様々な餌動物を摂食できるが,餌の捕捉は少なくとも餌の大きさと動きの速さによる制限を受けることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,セミエビ科3種において,クラゲだけを餌として孵化幼生から稚エビまでの飼育を達成した。さらに,クラゲ類の生化学的組成の分析やクラゲに対するフィロゾーマの捕食行動の観察も終えた。これらの研究成果を論文として公表する準備も進んでおり,研究開始時の計画どおり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
フィロゾーマが成長に利用するクラゲ由来の栄養成分を飼育実験と生化学的組成の分析により明らかにする。従来,クラゲには栄養がほとんどなく利用価値が低いと考えられてきたが,この分析によりイセエビ・セミエビ類の水産増養殖におけるクラゲ有効利用法を見出すことができると期待される。
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Research Products
(3 results)